生徒の主体性が生み出す学校行事の新たな挑戦
鴎友学園女子中学高等学校(東京都世田谷区)では、数多くの学校行事が生徒たち自身の手によって運営されています。この伝統は1990年代半ばから続いており、リーダーシップや協働性を育む貴重な機会として位置付けられています。今年度も、生徒たちの創意工夫により、運動会では新競技「背中のエール」が企画・実施され、タブレット端末を活用した事務連絡の効率化が図られました。さらに学園祭では、初めてキッチンカーによる食品販売が導入され、学校マスコットの手作りコーナーが大好評を博すなど、学校行事に新たな一ページを刻む活躍が目立ちました。
運動会実行委員会による新競技の誕生
同校の運動会は例年10月に開催され、終了後すぐに新しい運動会実行委員会が発足します。実行委員会は総務役員や会場係、進行係、審判係など7つの係で構成され、総勢約130人の大所帯です。委員はすべて立候補制で、応募者が募集人数を上回ることも珍しくありません。
今年度の運動会では、高校の3学年が競う「背中のエール」という新競技が初めて登場しました。これは中学で実施されていた「大玉送り」をアレンジしたもので、競技者が中腰になって並び、背中で大玉を送りながらゴールを目指します。この競技は、企画立案からルール作り、説明動画の制作まで、定例会のメンバーが一から作り上げました。
保健体育科で運動会担当の大崎拓海教諭は、「競技数が増えても運動会の終了時刻を遅らせないという制約の中で、全員が参加できて短時間で終了する競技を生徒たちが考え出しました。参加した高校生は楽しそうに熱中し、中学生からも『私たちもやりたい』という声が上がり、好評を得ていました」と評価しています。
タブレット端末を活用した運営の効率化
運営面でも、今年度は画期的な試みが導入されました。運動会当日、実行委員間の連絡手段として、従来の手旗信号や無線機に加え、生徒からの要望を受けてタブレット端末によるチャットが採用されました。大崎教諭は、「例年、予定時刻を過ぎて終了することが課題でしたが、チャット導入により事務連絡がスムーズになり、今年度は予定通り午後3時30分に終了することができました。生徒たちの柔軟な考えで課題が解決されました」と語っています。
学園祭でのキッチンカー導入とマスコット作り
学園祭を運営する学園祭実行委員会は、総務役員や校内催し物係、装飾衣装係、食品販売係など10の係で構成され、今年度は総勢156人が運営に携わりました。高2の担任で学園祭担当の樋口諒教諭は、「総務役員や係長には、鴎友生らしい責任感の強さが見られます。部活動に所属する生徒の中には、最後の学園祭公演を諦めてまで運営側を志願する者もおり、その心意気に感心しました」と話します。
昨年9月に行われた学園祭「かもめ祭」では、約1万人の来場者を迎え、初めて外部から呼んだキッチンカー3台によるタコライスやケバブ、たこ焼きなどの販売が実施されました。これに合わせ、実行委員会は来場者が教室内で飲食できるよう要項や規定集を改定しました。樋口教諭は、「昨年度は気温が高く、屋外での飲食が課題でした。キッチンカーで調理・販売し、教室内で飲食する形に改善することで、より快適にお過ごしいただけるようになりました」と説明します。
さらに、学校マスコットキャラクター「ゆうちゃん」の手作りコーナーも初開催され、事前予約がすぐに埋まる人気ぶりで、2日間で約90人の小学生が参加しました。ボランティアの生徒が講師役を務め、フェルトを使った制作を通じて交流を深めました。また、生徒の発案で各所に掲示された校内マップも来場者から好評を博しました。
教員の指導方針:生徒の主体性を尊重
学校行事を担当する大崎教諭と樋口教諭は、生徒たちの主体的な活動を見守ることを心がけています。大崎教諭は、「教員が指示をせず、『伝える』ではなく『気付かせる』という意識で接しています。生徒たちは自ら『やりたいことを実現するにはどうすればいいか』と考え、工夫を重ねます。コロナ禍でも運動会を中止せずに続けられたのは、彼女たちの積極性や主体性のおかげです」と語ります。
樋口教諭は、企画段階で生徒たちに問いかけを行い、課題に気付かせるようにしています。「例えばマスコット作りでは、ボランティア募集が集まらなかった場合や、受験生家族のベビーカー置き場など、具体的な課題を明らかにし、解決策を生徒自身に考えさせました。理想を形にする過程で失敗することもありますが、課題解決のために考え抜く力が成長につながります」と述べています。
大崎教諭は最後に、「学校行事の体験が直接役立つかは分かりませんが、みんなで協力して一つの行事に取り組んだ達成感や自信は、彼女たちの今後の人生に生きると思います。鴎友生らしく、何事にも自信を持って挑戦してほしい」と締めくくりました。



