熊本大が授業料値上げ方針、学生反対で署名活動 経営難と教育充実の板挟み
熊本大が授業料値上げ方針、学生反対で署名活動

熊本大学が授業料値上げ方針、学生反対で署名活動

熊本大学が2027年度から授業料を全学年一斉に値上げする方針を示したことに対し、一部の学生が反発し、インターネット上で署名活動を展開している。小川久雄学長は「国立大はすべて経営がカツカツの状態。発展のためには今やらないといけない」と理解を求め、学生との意見交換会を重ねている。最終判断は8月までに明らかにされる見通しで、関係者の注目が集まっている。

意見交換会で値上げへの理解を求める

4月30日に同大黒髪南キャンパスで開かれた意見交換会では、小川学長が今後の厳しい財政見通しを示し、担当者が授業料改定について説明した。会場は約200人収容可能だったが、参加者は在学生19人、保護者3人、教職員28人の計50人にとどまり、空席が目立った。その後も学生・保護者向けに対面とオンラインを併用した説明会を計6回開催したが、参加者は延べ107人だった。

値上げの内容と背景

国立大学の授業料は、文部科学省が2005年度から適用している標準額53万5800円に対し、各大学の判断で最大2割まで増額できる。2019年度以降、東京大学や山口大学などが2割の値上げを決めている。熊本大学は物価高などを理由に、年間53万5800円を59万4600円(約11%増)に引き上げる方針を3月に公表した。2020~2025年の消費者物価総合指数や名目賃金などを参考にしたという。

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新入生のみの値上げとする大学もある中、熊本大学は「物価高の影響は全学年で同時に押し寄せている」として全学年を対象とすることにした。

学生の反対運動

値上げ方針に、同大生が運営する「学費増額に反対する熊大生有志の会」は反発し、インターネット上で署名活動を開始。対象を学生や保護者に限っていないが、5月29日午後4時時点で約2700件の署名が集まっているという。同会は「意見交換会の案内がわかりづらく、一方的な説明で学生との誠実な対話を行えていない」「全学年一斉の値上げは、現行の授業料を前提に入学し、生活設計を行ってきた学生からの信頼を損ないかねない」と訴える。メンバーの男子学生(22)は、大学進学が家庭の経済状況に左右されかねないとし「格差が拡大してしまう」と懸念する。

大学側の対応と救済措置

熊本大学は、世帯年収425万円以下の学生については、値上げ分の11%を免除する独自制度を導入する方針だ。また、値上げに頼らない経営改善も模索してきた。企業からの受託研究、学内施設への命名権導入、研究資金のクラウドファンディングなどに加え、2023年11月には緊急支援の寄付を募るキャンペーンも実施した。しかし効果は限定的で、各学部の運営などに充てる2024年度の経費は2020年度比で約4.8億円増加。2016年4月の熊本地震を受けて一斉に更新した機器が10年経過で耐用年数を迎え、再び更新時期となっていることも経営圧迫の一因だという。

学生の意見は分かれる

工学部の男子学生(18)は「設備は壊れるものなので、更新しなければ立ち行かなくなる」と値上げに一定の理解を示す。一方、大学には「20%値上げして教育の質を高めてほしい」との意見も寄せられているという。

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取材後記

昨年6月から大学取材を担当し、熊本大学では文理融合型の新学部「共創学環」や、社会人向け半導体人材育成の「半導体リスキリングセンター」が開設されるなど、社会の動向に合わせた教育環境整備が進められてきた。一方、学内施設の学生会館では複数箇所で雨漏りが発生しているが修繕ができていないなど、整備が先延ばしにされている現状もある。それぞれの立場の事情は異なっても、互いが納得できる決着点が見いだされることを期待したい。(中村由加里)