東京都は、高齢者のデジタル機器への理解を深めるための講習プログラムを、2026年度から大幅に拡充する方針を固めた。これまでスマートフォンの基本操作に重点を置いてきたが、新たに人工知能(AI)の活用方法やオンラインでの行政手続きの実践的なノウハウを盛り込む。都は、急速に進むデジタル社会において高齢者が取り残されることを防ぎ、誰もが恩恵を受けられる環境を整えたい考えだ。
背景と現状の課題
現在、東京都内では区市町村が主体となり、高齢者向けのスマートフォン教室が多数開催されている。しかし、参加者の多くは電話やメールなどの基本的な機能しか使いこなせておらず、行政手続きのオンライン化やキャッシュレス決済などの応用的なサービスを利用するには至っていない。都の調査では、65歳以上の約4割が「デジタル機器の操作に不安がある」と回答しており、デジタル格差の解消が急務となっている。
拡充内容の詳細
新たな講習プログラムでは、以下のような内容が盛り込まれる予定だ。
- スマートフォン基本操作:電話、メール、カメラ、インターネット検索など、従来の基礎的な操作を引き続き提供。
- AI活用講座:音声アシスタントや翻訳アプリ、健康管理アプリなど、日常生活で役立つAI機能の使い方を紹介。特に、話しかけるだけで情報を得られる音声アシスタントは、文字入力が苦手な高齢者にも好評を得ている。
- オンライン行政手続き:マイナンバーカードを活用した確定申告や各種証明書の取得方法、公共施設の予約システムなどを実際に体験しながら学ぶ。
- キャッシュレス決済:QRコード決済や電子マネーの設定方法、安全な利用の注意点を解説。少額の買い物から慣れてもらう。
実施体制と今後の展望
講習は、各区市町村の公民館や地域包括支援センターなどで開催されるほか、オンラインでの受講も可能にする。講師は、これまで都が養成してきた「デジタルサポーター」と呼ばれるボランティアが中心となる。都は2026年度中に、少なくとも現在の2倍にあたる年間延べ5万人の受講者を目標に掲げる。
また、将来的にはAIを活用した個別最適化された学習コンテンツの開発も視野に入れており、高齢者一人ひとりのスキルレベルや関心に応じたカリキュラムを提供できるようにする計画だ。都の担当者は「デジタル技術は高齢者の生活の質を向上させる大きな可能性を秘めている。誰一人取り残さない社会を目指したい」と語っている。
専門家の見解
デジタル庁の有識者会議メンバーを務める情報社会学者の山田太郎氏(仮名)は、「高齢者向けデジタル教育は、単なる操作手順の習得にとどまらず、その先にある生活の豊かさを実感できる内容にすることが重要だ」と指摘する。その上で、「AIやオンライン手続きを学ぶことで、高齢者がより主体的に社会参加できるようになる。東京都の取り組みは、他の自治体のモデルケースとなるだろう」と評価した。



