三重県鳥羽市が、有人離島4島と本土を結ぶ市営定期船の船員確保に苦慮している。船員不足により、1日87便だった運航便数を2025年4月から81便に減便。生活の足として欠かせない離島住民にとって利便性が低下する中、市は持続可能な運航のあり方を模索している。
減便の実態と島民の声
今回のダイヤ改正で最も影響が大きかったのは、最大4便が減便された坂手航路。同島に長年住む90歳の女性は、通院などで定期船を利用しており、「家を早く出ないといけなくなった」と嘆く。一方で、「昔に比べて島は空き家も増え、人口減少が進んできた。仕方がないね」と理解も示す。
全5航路のうち減便されたのは3航路。坂手航路のほか、桃取航路で2便、答志航路で1便減少したが、神島航路では1便増便された。菅島航路では本土からの最終便を40分早め、坂手島の経由便を増やすなど合理化を図った。ダイヤ改正前の住民説明会では、経由便増加による乗船時間の延長や最終便の繰り上げに不満の声が上がったという。
慢性的な船員不足の背景
船舶業界では、給与水準の面から外航船や国内貨物船の乗組員に人気が集まりやすく、市営定期船の船員は慢性的に不足している。昨年は船員の退職や病休が重なり、2025年1月時点で32人の定員に対し7人が不足。現役船員は時間外勤務を余儀なくされていた。
市が減便に踏み切ったのは、船員の就労環境改善と安全運航維持が理由。船を1隻減らして4隻体制とし、坂手航路では一部便の運航を3600万円かけて初めてチャーター船業者に委託した。
こうした緊急対策により船員不足は解消しつつあるが、資格が必要な機関長は12人定員に対し4人が不足。現職8人のうち4人は5年以内に定年60歳を迎えるなど、厳しい現状は変わらない。
待遇改善と採用活動
市は2025年4月、船長と機関長を対象とする役職手当を最大10倍に増額し、乗船手当を新設。さらに、船員や機関士を養成する全国の海上技術学校や船員求職者向けセミナーに出向き、定期船の職場をアピールする取り組みも開始した。
市営定期船課の村山陽介課長は「船員の就労環境や待遇の改善が定期航路事業の継続につながる。これまで以上に船員の求人活動を続けながら、航路を維持していきたい」と語る。
原油高騰が追い打ち
市営定期船の運航に追い打ちをかけるのが、イラン情勢悪化に伴う原油高騰だ。市は2026年度当初予算で燃料費を約1億4000万円と見積もっていたが、このままだと約2億3000万円に膨らむ見通し。
燃料の軽油購入価格は3月上旬時点で1リットル119円だったが、5月には162円と大幅上昇。月10万リットルほど消費する市営定期船の燃料は複数業者による入札で調達するが、4月末の入札では市の予定価格が低く不調に終わり、随意契約で確保する事態も発生した。
さらに深刻なのがエンジン用潤滑油の不足。2025年度は年間固定価格で取引したが、「先が見通せず、供給ストップもあり得る」と販売業者から通告があり、月ごとの入札に変更して確保を続けている。潤滑油が不足すれば減便や欠航の可能性もあり、市は国や県と連携して確保に努めるとしている。



