合併で閉鎖された図書館、代替サービスあるけど…
三重県伊賀市で進む公共施設の統廃合。平成の大合併から20年余りが経過し、人口減少や施設の老朽化に対応するため、市は公共施設最適化計画を策定し、図書館や公民館などの統廃合を進めてきた。しかし、地域住民からは不便を訴える声や、施設の再開を求める動きも出ている。
移動図書館「にんにんブッカー」の現状
伊賀市中心部から車で30分ほどの山あいにある阿波地区では、4月下旬、市の蔵書約2千冊を載せたトラックが巡回してきた。これは、近くにあった大山田図書室が3月末で閉鎖されたことに伴う代替サービス「にんにんブッカー」だ。利用した70代女性は「図書室がなくなると聞いた時は嫌だなと思ったが、日時を合わせてよく使っている」と話す。一方、60代女性は「図書室は土日にも利用でき、子どもが遊ぶスペースがあった。地域から施設がなくなり、上野に集まっていく感じがする」と語った。
にんにんブッカーは週2日、平日のみ巡回し、1カ所当たりの利用時間は40分に限られる。そのため、学生や現役世代が利用するのは難しい。阿波地区でのこの日の利用者は3人で、直前に巡回した大山田支所では0人だった。
中心部には「泊まれる図書館」が開館
一方、市は中心部の複合施設「旧上野市庁舎SAKAKURA BASE」に4月、国内初の泊まれる公共図書館をうたう市中央図書館を開館した。旧上野図書館よりも蔵書数や面積が増え、開館時間も延長された。現在、伊賀市の図書館は中央と、旧伊賀町の北部、旧青山町の南部の3館体制となっている。
伊賀市は2004年11月1日、上野市と伊賀、阿山、青山町、大山田、島ケ原村の6市町村が合併して誕生した。面積は558平方キロで、県内3番目の広さ。合併後の人口は10万3300人だったが、2026年3月末時点で8万2700人に減少した。
合併後、旧市町村が保有していた公共施設の大半を引き継いだ結果、1人当たりの公共施設延べ床面積が県内平均の約1.5倍になり、将来的に過大になる懸念が出た。人口減で需要低下が予想され、多くの施設が1970~80年代に建設され更新費不足も見込まれたため、市は2015年に公共施設最適化計画を策定。廃止や機能の複合化に着手し、旧伊賀町のふるさと会館いがや、旧阿山町の阿山ふるさと資料館などを廃止した。
見直しを求める住民の声
こうした流れを見直す動きも出ている。2024年から休館している同市川合のあやま文化センターと阿山ふるさとの森公園は、最適化計画で機能の一部廃止や縮小が示されたが、「子どもの遊び場や発表会の場がなくなり困っている」として、地元住民が2025年、再開や活用を求める提言書や署名を市に提出した。
市は2026年度に地元住民や学識経験者などでつくる検討委員会を設置し、利活用を検討する。稲森稔尚市長は2月の市議会で、最適化計画の見直しを検討すると表明した。署名を提出した保護者らでつくる「あやまでみんなでこども育て隊」の代表、篠原靖子さん(42)は「市民の思いをくみとり、公園などを少しずつでも使えるようにしてほしい。子どもの健やかな教育に貢献する文化拠点となるよう活動していきたい」と語った。



