岩手県大槌町で発生した山林火災は、発生から5日目を迎えた。陸上と航空機による消火活動で延焼速度は抑えられているものの、一度消し止めたはずの場所から再び煙が立ち上る状況が続いている。この果てしない「もぐらたたき」に、地域住民は疲労を蓄積させている。
住民の悲痛な声
「えっ。また火が出た」。26日正午過ぎ、大槌町吉里吉里で養殖漁業を営む芳賀光さん(51)の携帯電話に、緊急の連絡が入った。火災発生直前に収穫したワカメを塩蔵し、裂き加工を終えなければ漁協への出荷期限に間に合わないが、避難や消火作業に人手を取られている。そんな最中の電話だった。
芳賀さんは作業の手を止め、急いで軽トラックに飛び乗り、作業小屋を後にした。水を入れたポリタンクや背負い式の消火器具を積み込み、山道を約5分上った。到着したのは、22日夜に火災が発生し、激しく燃えた福祉施設の裏手だった。
消火の難しさ
この場所は、22日夜に消防が徹夜で放水し、消し止めたはずの場所だった。しかし、黒く焦げた山の地表には黒い灰が積もり、無数の煙が噴き出していた。芳賀さんは先に消火作業を始めていた住民に誘導され、散水を開始した。1人が農作業用のくわで灰を掘り起こし、芳賀さんともう1人が水を注ぎ込む。22日に大量の放水を行ったにもかかわらず、地表はすでに乾いており、風が強まるにつれて煙の発生箇所も増えている。
住民によると、このような「もぐらたたき」のような作業が5日間続いているという。付近の風は不安定で、風向きが変わるたびに再燃する場所が変わるため、対応に追われている。
消防団員の見解
消防団員の石川一嘉さん(43)は「山火事の難しいところは、見えないところに火種が残っていることだ」と語る。山林には松葉などが10~15センチほど堆積しており、表面は燃えているように見えなくても、内部でくすぶり続けていることが多い。葉っぱを掘り返して確認しないとわからず、風が吹くと一気に燃え広がるため、消火が難しいという。
昨年の大船渡の火災を受けて、今年に入って山火事を想定した訓練を実施したが、消防団のホースは40メートルを2本分しか伸ばせず、今回の現場のような山奥には届かないという課題もある。
消火活動の現状
住民たちは「消防を待っていられない」と、県内の民間企業から無償で借り受けた10トン給水車をフル稼働させ、消火にあたっている。疲れた様子で「えらいことになった。これでは気が休まらない」と話す。福祉施設裏の焼けた山では、残った木の下に積もった灰の中でくすぶる火が煙を上げ続けている。
岩手県大槌町の山林火災は、1373ヘクタールを焼失し、1400人以上が消火活動に従事している。消火活動は長期化の様相を呈しており、住民の不安と疲労は日々増している。



