竜王戦棋譜の無断配信は「不法行為」と認定、賠償額325万円に確定
将棋の竜王戦の棋譜を動画で無断配信され、営業上の利益を侵害されたとして、主催者の日本将棋連盟と読売新聞東京本社が男性ユーチューバーに損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高等裁判所(鹿子木康裁判長)は2026年3月12日、男性の配信を不法行為と認定した。賠償額は、1審・東京地裁が命じた約840万円から変更し、325万円とした。
棋譜の知的財産価値を明確に認める判決
判決によると、男性は2022年から2024年にかけて行われた竜王戦七番勝負の対局当日、東京本社の許諾を得ずに、指し手の進行を示す盤面図や文字情報である棋譜を利用した動画計179本を動画投稿サイト「ユーチューブ」で配信した。男性側は訴訟で、棋譜について「客観的な事実だ」として自由に利用できると主張したが、判決はこれを退けた。
判決は「棋譜は後世に引き継がれ、将棋の歴史を形作るため、知的財産としての性質を有し、財産的保護に値する」とその価値を明確に認めた。さらに、主催者が多額の費用と多大な労力を投入している点や、男性の配信により棋譜の利用許諾料収入などを得る収益モデルが成り立たなくなるおそれがある点を挙げ、「男性は無断で主催者が投下した費用と労力にフリーライドしており、配信の態様は悪質だ」と述べ、不法行為に当たると判断した。
賠償額の算定方法を変更
賠償額については、1審が根拠とした動画本数ではなく、男性が配信した指し手の数に基づいて算定した。これにより、賠償額が大幅に減額された。また、日本将棋連盟の個別の損害は認められなかった。
主催者側の反応
日本将棋連盟は「新聞社と長年築いてきた棋戦の運営方法が、将棋文化の持続的発展に不可欠であることが改めて司法の場で確認されたものと受け止めている」とコメントした。
読売新聞グループ本社広報部も「新聞社と日本将棋連盟が長年作り上げてきた収益モデルの正当性を認めており、将棋文化の発展に資する意義のある判決だ」と評価を示した。
この判決は、デジタル時代における知的財産保護の重要性を浮き彫りにし、将棋界の運営基盤を守る先例となりそうだ。



