寺社油かけ事件で米国在住容疑者、日本への引き渡しが決定
2015年に全国各地の寺社で油のような液体がかけられる被害が相次いだ事件で、千葉県内で発生した2件について建造物損壊容疑で逮捕状が出ていた米国在住の日本人医師の男性(63)の身柄が、米国政府から日本に引き渡される見通しとなった。捜査関係者への取材により明らかになった。
9年に及ぶ逃亡と引き渡し手続き
千葉県警察は2015年当時、同県香取市の香取神宮と成田市の成田山新勝寺の建造物に液体をかけた建造物損壊の疑いで、男性医師の逮捕状を取得していた。しかし、男性が事件後に米国へ出国したまま帰国せず、逮捕状の執行ができない状態が長期にわたって続いていた。
日本側は日米間の犯罪人引き渡し条約に基づき、米国に対して身柄の引き渡しを正式に要請。引き渡しをめぐる米国での訴訟資料によれば、2023年1月に米連邦地裁が引き渡しを認める決定を下した。男性側はこれを争ったものの、今年1月までに控訴裁と最高裁も地裁の決定を支持し、司法手続きが完了した。
身柄引き渡しと今後の捜査方針
男性は米国から民間機で日本に移送され、近日中にも到着する見込みである。千葉県警察は、米国側から身柄が引き渡され次第、まず香取神宮に対する建造物損壊の容疑で逮捕を執行する方針を固めている。
警察庁のまとめによると、2015年の事件では世界遺産に指定されている二条城(京都市)や東寺(同)、東大寺(奈良市)をはじめ、全国16都府県48カ所で同様の被害が確認されている。警察が各地の防犯カメラ映像やレンタカーの利用記録などを詳細に分析する過程で、今回の男性が複数の事件に関与した疑いが強まったとされる。
容疑者側の主張と事件の背景
身柄引き渡しをめぐる米国での訴訟資料によれば、男性は米国ニューヨークで診療所を開設する一方、キリスト教系の団体を設立していた。代理人弁護士は逮捕状の容疑について、仮に男性が行ったとしても、建物を清める目的で少量の植物性オイルを指先につけて触れただけであり、犯罪には該当しないと主張していた。
この事件は文化財保護と宗教施設の安全確保という観点から、社会全体に大きな関心を集めてきた。被害を受けた寺社の関係者や地域住民からは、早期の解決を求める声が根強くあった。今回の身柄引き渡し決定により、約9年に及んだ捜査に大きな進展が見込まれる状況となった。
千葉県警察は、男性の到着後、詳細な事情聴取を進めるとともに、全国で発生した他の事件との関連性についても慎重に調査を進める方針である。引き続き、文化財や宗教施設を対象とした犯罪防止対策の強化が求められる案件と言える。



