伊方原発の運転差し止め訴訟、住民側の訴えを棄却 山口地裁岩国支部が判決
四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを求めた訴訟で、山口地裁岩国支部(小川暁裁判長)は2026年2月26日、原告である瀬戸内海対岸の山口県の住民ら約160人の請求を棄却する判決を言い渡した。
伊方3号機の運転差し止めを求めた同様の集団訴訟の判決は、これまでに大分、広島、松山の各地裁で行われており、今回が4件目となる。いずれの判決も住民側の敗訴という結果に終わっており、司法判断が一貫している状況が浮き彫りとなった。
住民側の主張と電力会社の反論
原告側は主に三つの点を主張した。まず、原発の近くに活断層が存在する可能性を指摘し、四国電力が実施した調査が不十分であるため地震に対する安全性を欠いていると訴えた。
次に、約130キロ離れた九州の阿蘇山が過去に巨大噴火を起こした際、火砕流が本州に達した事実を挙げ、再び同規模の噴火が発生した場合、原発に重大な被害を及ぼす危険性があると主張した。さらに、噴火の事前予測が可能であることを前提とした原子力規制委員会の審査を「不合理」と批判した。
加えて、万が一の事故発生時に備えた避難計画の不備も問題視し、住民の安全が確保されていない状況を訴えた。
これに対し、被告の四国電力側は、周辺海域で実施した音波探査によって沿岸に活断層がないことが確認されていると反論。阿蘇山の巨大噴火についても、原発の運用期間中に発生する可能性は統計的に十分に小さいと主張し、安全性が確保されていることを強調した。
長引く訴訟の経緯と過去の仮処分決定
山口地裁岩国支部への提訴は2017年12月に行われ、その後30回に及ぶ口頭弁論を経て、2025年4月に結審していた。約8年にわたる長期の訴訟過程で、双方の主張が詳細に審理された。
伊方3号機をめぐっては、過去に2017年12月と2020年1月の二度にわたり、広島高等裁判所が地震や火山噴火への対策が不十分であるとして、運転差し止めを命じる仮処分決定を出した経緯がある。
しかし、いずれの場合も広島高等裁判所が自ら行った異議審でこれらの決定を取り消しており、一時的な司法判断の揺れがあったものの、最終的には運転継続が認められる傾向が続いている。
原子力政策をめぐる社会的な議論
今回の判決は、原子力発電所の安全性をめぐる司法判断の一例として注目される。住民側が主張する活断層や火山噴火といった自然災害リスクと、電力会社が提示する科学的調査結果との対立が、裁判の焦点となった。
また、避難計画の実効性に関する議論も、原発立地地域だけでなく、周辺自治体を含めた広域的な防災対策の重要性を浮き彫りにしている。今後の原子力政策において、安全性の確保と地域住民の安心感の両立が、引き続き重要な課題として残されている。
伊方原発をめぐる訴訟は、司法の場で安全性が審理される貴重な機会となっており、今後の類似訴訟や規制当局の審査にも影響を与える可能性がある。地域住民と電力会社、規制機関の間で、持続可能なエネルギー政策と安全確保のバランスをどう図っていくかが問われている。



