世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は23日、ジュネーブで開催された総会で演説し、昨年5月に成立した国際ルール「パンデミック条約」の運用規則となる「付属書」の早期合意を各国に強く訴えた。総会は同日閉幕した。
付属書の重要性を強調
テドロス氏は演説の中で、各国が条約の署名・批准手続きを開始するためには付属書の採択が不可欠であると指摘。その上で、国際社会の関心を集めるエボラ出血熱やハンタウイルスに言及し、「付属書がなければ、世界が次のパンデミックに備えているとは言えない」と強い危機感を表明した。
パンデミック条約の背景
パンデミック条約は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行を教訓に、将来の感染症流行に備えるための国際的な枠組みとして2024年5月に成立した。しかし、具体的な運用ルールを定める付属書の合意が遅れており、条約の実効性が懸念されている。
テドロス氏は、付属書がパンデミック発生時の迅速な情報共有や対策の調整、医療資源の公平な分配などの基準を定める重要な文書だと説明。各国に対し、政治的決断を促した。
総会での議論
今回の総会では、付属書の内容をめぐり先進国と途上国の間で意見の隔たりが表面化。特に、ワクチンや治療薬の特許権や製造技術の共有に関する条項で対立が続いている。テドロス氏は、これらの課題を克服し、早期の合意を目指すよう呼びかけた。
また、テドロス氏はエボラ出血熱の再流行やハンタウイルス感染症の発生を例に挙げ、新たな病原体の脅威が常に存在することを警告。「時間は私たちの味方ではない」と述べ、迅速な行動の必要性を強調した。
総会閉幕後、テドロス氏は記者団に対し、付属書の交渉を加速させるため、専門家による作業部会の設置を検討していることを明らかにした。今後の交渉の行方が注目される。



