神奈川県警が交通違反取り締まりの大規模不正を公表 2716件取り消し7人書類送検
神奈川県警察は2026年2月20日、交通違反取り締まりにおいて反則切符や調書に虚偽記載があったとして、虚偽有印公文書作成・同行使容疑で、県西部の小隊に所属していた40代の男性巡査部長ら7人を書類送検したと発表しました。同時に、2022年から2024年にかけて行われた疑わしい取り締まり2716件の違反を取り消し、納付済みの反則金約3457万円を対象者に還付する方針を明らかにしました。
組織的な不正が常態化 追尾不十分な速度測定で虚偽記載
書類送検された容疑は、巡査部長と部下1人が2024年1月、小田原厚木道路において、追尾が不十分な状態で取り締まり対象車両の速度を測定し、虚偽の公文書を作成したなど9件に及びます。県警の調査によると、7人全員が容疑を認めており、主導した巡査部長は「1件でも多く取り締まりたかった」と供述しています。
不正が発覚したきっかけは、反則切符を切られた運転手が記載内容に疑問を抱き、県警に相談したことでした。内部調査の結果、茅ケ崎市を拠点とする第2交通機動隊第2中隊第4小隊において、反則切符で「追尾測定距離」を実際より長く記載したり、違反の否認に伴う刑事事件手続きで実況見分調書を作成する際、現場に臨場したと装ったりする運用が常態化していたことが判明しました。
県警が厳重処分を実施 今村本部長が謝罪会見
神奈川県警は20日付で、巡査部長を懲戒免職とし、関与した他の隊員や上司ら8人を停職6カ月や減給の処分にしました。さらに監督責任などで交通部長ら9人を口頭厳重注意とし、警察庁も和田薫・前本部長に対し口頭厳重注意の処分を決定しました。
今村剛本部長は同日の記者会見で、「対象者に多大なご迷惑をかけるとともに、交通違反取り締まりに対する信頼を大きく損ない、深くおわびを申し上げる」と謝罪しました。本部長は警察組織としての責任を重く受け止め、再発防止に全力を尽くす姿勢を示しました。
全国38都道府県に波及 免許停止者への補償が課題に
是正措置の対象となる違反取り消し件数は、反則切符の虚偽記載などによる2696件と、実況見分調書の虚偽記載による52件(重複32件を含む)の合計2716件に上ります。県警は20日、対象者への通知文を発送し、土日祝日を含めた24時間対応の相談ダイヤルを設置しました。
対象者の免許証住所は1月26日時点で38都道府県に及び、県警は各地警察に免許証再作成などの協力を要請するとともに、対象者への電話連絡や自宅訪問を進めています。特に問題となっているのは、この不正取り締まりによって免許の停止や取り消し処分を受けた人々への補償問題で、今後の重要な課題として浮上しています。
警察庁が再発防止策を発表 科学的証拠収集体制の整備へ
警察庁は20日、再発防止策を発表し、走行中の捜査車両から違反車両の速度をカメラやセンサーで自動計測できるシステムの開発に取り組む方針を示しました。また、交通規制が必要となりがちな実況見分の調書に代えて、ドライブレコーダー画像で捜査報告書を作成するなど、刑事事件手続きの合理化も視野に入れています。
同庁と各都道府県警には取り締まりを指導するチームを新設し、研修や書類の作成状況の点検を実施する予定です。警察庁の担当者は「巡査部長らは取り締まりの目的を正しく理解せず、基本意識も欠如していた。二度と起こしてはいけない」と強い反省の意を表明しました。
専門家が指摘する警察信頼の危機と制度改革の必要性
東京都立大学の星周一郎教授(刑法)は今回の事件について、「警察への信頼で成り立つ違反取り締まりの不正は、全国の警察業務にも影響しかねない」と指摘します。星教授は「しばらくは、取り締まりに腹を立てたドライバーから警察官が罵声を浴びせられる可能性もある。現場が萎縮し違反が見逃されれば、安全が損なわれ、国民の不利益になる」と懸念を示しました。
さらに教授は、神奈川県警の例について「取り締まりに抜け穴があってもチェックされない体制が問題」と分析し、「ドライブレコーダー映像やウエアラブル端末を活用し、科学的に、客観性を持って証拠を示せるような対策が不可欠だ」と提言しています。警察組織全体の透明性向上と証拠収集体制の見直しが急務となっています。



