浜岡原発全基停止15年、データ不正と巨大地震にどう向き合うか
浜岡原発停止15年、データ不正と巨大地震への対応

中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)は14日、全基停止から15年を迎えた。データ不正問題もあり再稼働の見通しが立たない中、南海トラフ巨大地震の想定震源域で「世界で一番厳しい所に位置している」といわれる原発にどう向き合うべきか。経済産業相(当時)として停止要請に関わった海江田万里氏(77)と、元科学技術庁原子力局長の興直孝氏(81)に聞いた。(曽根智貴)

海江田万里氏「廃炉できたら良かった」

元経産相の海江田万里氏は、2011年5月に経産相として停止要請を主導した経緯を振り返る。

停止要請の背景

「南海トラフ巨大地震がいつ起きないとも限らない。最近は富士山の噴火が問題になっているのも踏まえると、浜岡は地理的な条件でそもそも無理だと思う。あの時に判断して良かった。ただ、地元に丁寧に説明できず申し訳なかった。」

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要請までの経緯について、海江田氏は「政府の中央防災会議で『東海地震の30年以内の発生確率87%』と示された。浜岡原発で事故が起きたら、日本が東西に分断されて物流が途絶え、首都圏にも大きな影響がある。現地を視察し、砂丘の斜面を津波が駆け上がる光景がイメージされ、これは駄目だと思った」と語る。

データ不正への見解

データ不正については、「都合の良いデータで再稼働に結び付けるのは一番やっちゃいけないこと。自分と菅直人首相(当時)に言われてスケープゴートにされた、という意識が中電にあったのかもしれない。12年にはデータのごまかしが始まっていたのは、東京電力福島第1原発事故を他山の石としていなかったように思える」と指摘する。

原発のあり方

「原子力の平和利用を全くなくすのは反対だが、政府が(浜岡を含む)経年劣化した既設炉の耐用年数をどんどん延ばしているのはまずい。石油の値段が高くなると、必ず原子力へのアクセルが踏まれる。福島の事故の経験から、本当にいいのかという疑問がある。」

「中電は原発依存度が比較的低い。(浜岡を)廃炉にできるならした方が良かったけれども、15年たって残念ながら再生可能エネルギーにシフトする方向にならなかった。脱原発で電力を安定して確保できる国の政策の後押しもなかった。」

海江田万里氏は1949年、東京都生まれ。経済評論家を経て93年衆院選で初当選し、民主党政権で経済財政担当相や経済産業相。下野後、民主党代表や衆院副議長を歴任した。10選を目指した今年2月の衆院選は次点で落選。

興直孝氏「脆弱な審査体制強化を」

元科技庁原子力局長の興直孝氏は、15年前の停止当時、政府の要請を「道理の通らない」と批判していた。

停止要請への批判

「なぜ浜岡だけをターゲットにしたのか、説明が足りなかった。経産相から中部電力の社長に宛てられた文書は東海地震の発生可能性だけを根拠とし、他の原発が問題ないとはならない。東海道という日本の基軸の安全を確保する、といった論理が必要だった。」

データ不正の受け止め

「原子力事業者は他の事業者と異なり、重大事故などを起こさないようにしなければならない責務がある。原子炉等規制法で原子炉設置の許可要件となっている『技術的能力』が、中電にあったかどうかが今回の事案で問われている。」

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技術的能力について、「(原子力規制委員会の)審査指針では、安全を確保して事業を的確に推進する組織の管理能力に、技術者の知識や技能を含むとされる。(今回の不正は)担当者が検討した地震動の提案を、中電内部で浮き彫りにできなかった組織のもろさが一番の問題。第三者委員会に調査を委ねるのではなく、中電自身がどこに問題があったかを明らかにできないと、事業者としての資格はないと危ぶんでいる」と述べる。

規制委の審査体制

「規制委の審査の脆弱性が明らかになったことにがくぜんとしている。規制委の委員と(規制委の事務局の)原子力規制庁の職員による審議に限界があるのではないかと案じる。審査体制の強化を求めたい。その際、(規制委が任命した)さまざまな分野の専門家でつくる安全専門審査会が、個別の施設の審査に関わっていくことが必要と考える。規制委は国民に安心感を与えられるよう、体制の構築を図ってほしい。」

興直孝氏は1944年、島根県生まれ。旧科学技術庁で原子力局長や科学技術振興局長を歴任し、2001年に退官。07~10年、静岡大学長。10年から浜岡原発の防災対策を点検する静岡県の有識者会議の委員を務めている。