内密出産をめぐる政治動きが本格化 法制化へ向け与野党が相次ぎ動く
病院の担当者以外に身元を伏せて出産する「内密出産」をめぐり、政治の動きが急速に活発化している。自民党は党内にプロジェクトチーム(PT)を立ち上げ、支援の可能性の検討を開始。一方、国民民主党は内密出産に関する法案を今国会にも提出する構えを見せており、法制化に向けた議論が本格化しそうだ。
自民党PTが熊本の慈恵病院を視察 初の公式訪問に
2026年4月6日、自民党の内密出産について考えるPTの松野博一座長をはじめ、地元選出でPT発足を主導した坂本哲志氏、孤独・孤立対策特命委員長の阿部俊子氏ら衆院議員が熊本市西区の慈恵病院を公式に訪問した。与党の国会議員が正式な立場で同病院を視察するのは初めてのことである。
慈恵病院は全国で初めて内密出産に取り組み、2021年12月の初事例以降、これまでに69人の子どもが誕生している。しかし、現状では法的な裏付けがなく、蓮田健院長や内密出産で生まれた子どもの戸籍を作成する熊本市は、国に対して再三にわたり法制化を求めてきた経緯がある。
「こうのとりのゆりかご」も視察 現場の声に耳を傾ける
松野氏らは、これまで内密出産を希望する女性たちを支えてきた蓮田真琴・新生児相談室長やスタッフから、これまでの経緯や課題について詳細な説明を受けた。さらに、親が匿名で子どもを預け入れられる「こうのとりのゆりかご」も実際に視察し、現場の実情を直接確認した。
蓮田院長によれば、内密出産は虐待や性暴力、性産業との関わりなど複雑な背景を持つケースも少なくなく、適切な法的枠組みの整備が急務となっている。視察に参加した議員らは、こうした現場の声を真摯に受け止め、今後の政策検討に反映させる意向を示した。
国民民主党は法案提出を準備 法制化へ向けた動き加速
一方、野党の国民民主党も内密出産に関する法案を今国会に提出する方針を明らかにしている。同党は地方議員の倍増を目指すなど組織強化を進めており、内密出産問題を重要な政策課題として位置づけている。
現行制度では、内密出産で生まれた子どもの戸籍作成に際して様々な課題が生じており、法的整備が待たれている。国民民主党の法案提出により、与野党を超えた本格的な議論が国会で行われる可能性が高まっている。
社会的ニーズの高まりと政治の対応
内密出産をめぐっては、大阪・泉佐野市が赤ちゃんポストの導入を検討するなど、地方自治体の動きも活発化している。また、孤立出産や育児放棄といった社会問題との関連性も指摘されており、単なる出産方法の問題ではなく、幅広い社会的支援の枠組みとして議論される必要性が増している。
自民党PTは今回の視察結果を踏まえ、今夏にまとめられる「骨太の方針」にも内密出産に関する課題を盛り込むことを検討している。政治の場で内密出産が正式に議論されることで、これまで法的に曖昧だった領域に明確な枠組みが与えられることが期待される。
今後は、与野党双方の動きがどのように具体化し、実際の法制化につながっていくかが注目される。内密出産を必要とする女性たちや生まれてくる子どもたちの権利を守るため、早期の法整備が求められている。



