「国論二分は勘弁して」高市首相の言葉に女性たちが違和感 ジェンダー平等への不安語る座談会
高市首相の言葉に女性たちが違和感 ジェンダー平等への不安語る

「国論二分は勘弁して」高市首相の言葉に女性たちが違和感 ジェンダー平等への不安語る座談会

憲政史上初の女性首相となった自民党の高市早苗総裁。急な衆院解散に踏み切り、2026年2月の総選挙では自民党単独で絶対安定多数(261議席以上)を大きく上回る316議席を獲得し、政権基盤を盤石にした。女性の進出を阻む政界の「ガラスの天井」を破ったとはいえ、手放しで喜べないとの声がある。高市首相の「働いて働いて働いて」発言や「国論を二分するような大胆な政策」発言に不安を募らせる女性たちの思いを、2月中旬に開催された座談会で聞いた。

「時代と逆行していない?」働き方発言に懸念

衣装デザイナーの林佐登子さん(51)は、高市首相の「ワークライフバランスという言葉を捨てる。働いて働いて働いて」という発言について、「バーンって言われちゃった。時代と逆行していない?」と疑問を投げかける。介護士の森京子さん(71・仮名)は「いや、働いてますし」と受け止めたものの、会社員の木村芳江さん(62・仮名)は「国のトップになったら言葉選び、世の中に与える影響を考えないと」と指摘する。

木村さんは「子育てしながら働けるよう、育休など制度も整ってきたのに、その方向性を変えていいような空気がつくられちゃうかもしれない」と懸念。選択的夫婦別姓の問題も「私たちが願ってきたことと逆に向かわないかどうか」と不安を口にした。

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選択的夫婦別姓「なぜいけないの?」制度実現への道遠く

高市首相は旧姓の通称使用の法制化を進め、「社会生活で不便や不利益を感じる方を減らせる」と語っている。しかし、選択的夫婦別姓の導入を求める人たちからは「通称使用でよしとされないか」との不安の声が上がっている。

林さんは自身の経験を語る。「私は通称で通そうとしたけれど、取引先から口座の名義を戸籍名と『同一にして』と言われた。そのやりとりが面倒くさくなり、旧姓で仕事することをあきらめた。結局は不利益で、積み上げた経歴が結婚によってとりあえずリセットされる」。

木村さんの娘は切実な事情を抱えている。「秋には赤ちゃんが生まれるが、選択的夫婦別姓の制度ができそうな雰囲気はあったから、それを待って婚姻届は出してこなかった。けれどそこにストップがかかったように感じる。夫婦間の悩みが増えた。『選択制』なのに、なぜいけないの?」

選択的夫婦別姓とは、夫婦が望む場合、結婚前の姓を結婚後も名乗ることができる制度。1970年代に最初の国会請願があり、2025年には立憲民主党が実現に向けた法案を提出。高市首相は2026年3月16日の参院予算委で「慎重な立場だ」と述べた。同月13日に閣議決定された「第6次男女共同参画基本計画」では、旧姓の通称使用の拡大に向けた法整備の検討が明記されている。

林さんは同性婚の問題にも触れ、「同性婚も遠のいた。(性的少数者の問題を正面から取り上げた)『虎に翼』(NHK連続テレビ小説、2024年)があんなにはやって、ちゃんみなさんも人気あって。多様性が認められる風潮があるのに。不思議だ」と語った。

社会保障改革「現役世代の負担抑制」の裏側

社会保障制度改革で「現役世代の保険料負担を抑える」という方針について、木村さんは「現役世代の負担抑制といっても、家族のサービス利用がある。わが家は当事者。両親が訪問介護、デイサービスを併用している。1割負担が2割に上がると本当に大変」と現実的な課題を指摘する。

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森さんも「勤め先の介護施設でも、利用できない家庭が増えないかと心配している」と懸念。主婦の鈴木法子さん(57)は「介護や保育など女性が担うことの多い現場って賃金が安いと言われる。そういう声をすくい上げてくれれば」と期待を込める。

木村さんは「『女性首相』に期待することだね」と語り、鈴木さんは「すくい上げてくれれば希望がわく。ただそういう姿勢があまり伝わってこない。介護サービスも利用しづらく『大変な仕事は家庭で女性が担え』『家族で完結せよ』みたいになるなら時代錯誤な感じ」と危惧した。

「国論を二分」発言に戦慄 憲法改正への懸念も

衆院解散時に高市首相が「国論を二分するような大胆な政策・改革にも挑戦」と発言したことについて、林さんは「私は、東京電力福島第1原発事故の後、学生時代の友達に頑張って脱原発を発信したら空振りして、友達をたくさん失った経験があって。『二分』とか言われると、勘弁してほしいと思ってしまう」と心情を明かす。

鈴木さんも「国論二分と言うくらいだから、家庭によっては家族で意見が分かれてもおかしくない。日常にも支障が出そう」と懸念を示した。

憲法改正を巡っては、高市首相が「憲法改正の原案を国会に提出することも可能」「国の理想の姿を物語るのは憲法」と発言している。木村さんは「権力が好き勝手できないように律するのが憲法で、順守しなければいけない立場なのに…」と疑問を呈し、鈴木さんは「その立憲主義自体を変えたいのかな?」と危惧した。

衆院選後初の国会(2月18日〜)で、高市首相の方向性は輪郭を帯びつつある。2月20日の施政方針演説では、憲法について「どのような国を創り上げたいのか、その理想の姿を物語るもの」との見方をあらためて示し、改憲について「国会発議が早期に実現されることを期待する」と述べた。個人の自由や権利を守り国家権力を縛る憲法を曲解しているとの批判も受けるが、選挙大勝を受け自民党が「奪還」した衆院憲法審査会長には首相と政治信条が近いとされる古屋圭司氏を据え、環境整備が進んでいる。