結婚前に波風立てないほうが…妻の姓を選んだ夫婦を悩ませた「常識」の壁
妻の姓選んだ夫婦悩ませた「常識」の壁

結婚前に波風立てないほうが…妻の姓を選んだ夫婦を悩ませた「常識」の壁

2026年3月8日、東京都に住む会社員の中山洋介さん(39)は、昨年5月に婚姻届を提出する際、妻の姓である「三谷」を選んだ。この決断は、周囲の「常識」と衝突することになる。

日本では、婚姻届を提出する夫婦の94%が女性側の改姓を選択している。中山さん自身も長年、「結婚すれば女性が名字を変えるもの」と思い込んでいた。両親や友人も同様の考えを持ち、ネット上のパスワード設定時の定番質問「母親の旧姓は?」がその固定観念を強化していた。

「男性が姓を変えるのは特別なことじゃない」

結婚を決意し、手作りの婚姻届を作成する過程で、中山さんは書式に「婚姻後の夫婦の氏」欄があり、妻か夫の名字のどちらかを選べることを知った。妻が名字に強い愛着を持っていることも理解していた。「じゃあ俺が変えるわ」――前向きな気持ちで決断した瞬間だった。

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しかし、この選択は周囲から予想外の反応を引き起こす。友人や上司に改姓を報告すると、「へえ、今はそんなことができるんだ」という驚きの声が返ってきた。中には、妻の「家」を継ぐ婿養子になったと誤解する人もいた。

中山さんは勤務先でも旧姓を使用し続けることにした。職場環境を考慮した判断だが、内心では複雑な思いを抱えている。結婚前に波風を立てないほうが良いという暗黙の圧力が、夫婦の選択を制限している現実が浮き彫りになった。

社会に根強く残る「当たり前」の壁

この事例は、選択的夫婦別姓を巡る議論の一端を映し出す。法律上は夫婦どちらかの姓を選べるにもかかわらず、94%という圧倒的多数が女性の改姓を選択している背景には、社会全体に浸透した「常識」が存在する。

「名字は何になるの?」――結婚を控えたカップルに対し、この質問が女性にばかり向けられる傾向は、無意識のバイアスを示している。中山夫妻の経験は、そんな日常的なやり取りが、個人の選択にどのような影響を与えるかを如実に物語る。

選択的夫婦別姓の実現を求める声は近年高まっているが、政治や制度の変化が社会の意識に追いついていない現状も明らかだ。中山さんの決断は、単なる個人的な選択を超え、ジェンダー平等や家族の在り方を問い直す契機となっている。

人々が行き交う街中で、中山さんは今も自身の選択について考え続けている。結婚前に波風を立てずに済むように――そんな「常識」が、夫婦の自由な選択を阻む壁として立ちはだかる現実に、多くのカップルが直面している。

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