中部9県で女性議員ゼロの市町村議会が16に 政治参加の壁と地域の実情
男女平等度を分析した2026年の「都道府県版ジェンダー・ギャップ指数」では、政治分野における停滞が顕著に表れている。昨年は女性初の首相が誕生したものの、総務省の調査によれば、2024年末時点で女性議員が一人もいなかった市町村議会は中部9県で25に上った。本紙の独自調査では、そのうち16の市町村議会で現在も女性議員ゼロの状況が継続していることが明らかになった。
「男性議員に分かってもらえない」現場の声
「子育てやごみ問題などの政策を訴えても、男性議員に理解してもらえないと感じることは頻繁にある」。そう語るのは、愛知県内のある議会で唯一の女性議員だ。住民から「やはり女性議員がいるのは良いね」と言われる度に、「では一緒に活動しましょう」と声をかけてきたが、子育てや家族の反対などを理由に、なかなか立候補に至らない現実があるという。
2016年から女性議員ゼロが続く岐阜県池田町議会(定数10)。3月定例会が開会した2日、本会議場には町側を含めて男性しかいなかった。まちづくりを支援する「ぎふコミュニティづくり支援の会」の会長で町内在住の倉地幸子さん(77)は、「女性ならではの生活に根差した視点が議会に欠けているのではないか」と疑問を抱いている。
倉地さんは2004年から町議を1期務めた経験から、「各区の推薦といった男性が決めた枠組みに入らなければ、議員になるのは難しい」と実感。区長など地域組織の役員も男性が多いため、女性議員を増やすには、一定数を女性に割り当てる「クオータ制」が不可欠だと指摘する。
女性ゼロへの評価は分かれる
一方で、女性ゼロの状況に対する評価は地域によって異なる。町内で「女性セミナー学習会」を主催する勝野たか子代表は、性別に関係なく意見が町政に反映されている実感があると語る。「女性も男性も関係ないのではないか」と受け止めている。
岐阜県川辺町議会(定数9)では1999年に初の女性議員が誕生したが、3期目に挑んだ2007年に落選。以来、女性ゼロが続き、4回の町議選では女性の立候補すらない状況だ。佐伯雄幸議長(74、5期)によると、選挙の度に女性の名前は挙がるものの、最終的に断念するケースが多いという。「祭りや地区の行事にも頻繁に顔を出さなければならない。育児など家庭の事情もあるのではないか」と推測する。
子育てと介護の経験が政策に生きる
上智大学の三浦まり教授(政治とジェンダー)は、ケア労働を理由に女性が立候補できず、その問題が政策の表舞台で議論されないという負の循環が存在すると指摘する。「子育てや介護などの経験は政策に活かされる。それが住民の声に耳を傾けるのと同じくらい重要だと認識されれば、誰が選ばれるべきかという基準は変わってくるはずだ」と語る。
愛知・みよし市議会の変化 0人から5人へ
愛知県みよし市議会(定数20)は2023年の市議選で、当時ゼロだった女性議員が5人誕生した。女性議員3人の会派「希望の風」に所属する寺本弘子議員(50)は当選以来、子育て世代向けの政策に力を入れてきた。市議会の一般質問で提案し、施策に結び付いた例として、中学校の「校内フリースクール」の全校設置や、産前産後の母親の家事・育児を支援する民間資格「産後ドゥーラ」の利用補助などが挙げられる。
自身も17歳と13歳の娘を育てる寺本議員は、「保護者としての関心事を代弁している。等身大の思いを市政に反映できたら」と話す。小山祐市長は、「多様な意見が反映されることで施策の質が向上した」と実感を語り、「今後も女性議員ならではのネットワークで得たものを活かしてもらいたい」と期待を寄せる。
中部地域では、女性の政治参加が進まない背景に、子育てや地域活動との両立の難しさ、伝統的な枠組みの壁などが横たわる。一方で、みよし市のような前向きな変化も見られ、クオータ制の導入や社会全体の意識改革が求められる状況が浮き彫りになっている。



