漢方薬「当帰芍薬散」が多嚢胞性卵巣症候群に効果を示すメカニズムを解明
愛知医科大学、名古屋大学、そして漢方薬大手のツムラからなる共同研究チームは、2026年2月15日、漢方薬の「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」が、月経不順や不妊の原因となる多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の症状を改善する仕組みを、動物実験によって明らかにしたと発表しました。この研究成果は国際医学誌に掲載され、PCOS治療における新たな選択肢として注目を集めています。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは
多嚢胞性卵巣症候群は、未熟な卵胞が多数形成され、卵巣内に蓄積することで排卵が困難になる疾患です。妊娠可能な年齢の女性の約1割が発症するとされ、無月経や月経不順を引き起こします。現在、確立された特効薬は存在せず、治療には主に排卵誘発剤が用いられていますが、副作用などの課題も指摘されています。
研究の詳細と発見されたメカニズム
研究チームは、PCOSを再現したラットモデルを用いて実験を実施しました。その結果、PCOSのラットでは、卵胞の発育を促進する特定のタンパク質の量が、通常よりも顕著に増加していることが確認されました。この過剰なタンパク質の働きが、異常な卵胞の形成を助長し、正常な排卵を妨げていると考えられます。
興味深いことに、当帰芍薬散を投与したところ、このタンパク質の活性が抑制され、異常な卵胞の数が減少しました。同時に、排卵に至る正常な卵胞が増加し、月経周期も正常な状態に近づくことが観察されました。これにより、当帰芍薬散がPCOSの根本的な症状改善に寄与する可能性が示唆されました。
臨床的な意義と今後の展望
愛知医科大学の大須賀智子教授(産婦人科学)は、「この研究により、当帰芍薬散がPCOS患者の症状軽減に役立つ可能性が明確に示されました。副作用を懸念して排卵誘発剤の使用を避けたい患者や、既存の治療と併用したい場合に、有効な選択肢となり得ます」と説明しています。
当帰芍薬散は古くから月経不順などの治療に用いられてきましたが、その作用機序については不明な点が多く残されていました。今回の研究成果は、漢方薬の科学的なエビデンスを強化し、現代医学との統合を推進する重要な一歩と言えるでしょう。
研究チームは、今後もヒトを対象とした臨床試験を進め、当帰芍薬散の安全性と有効性をさらに検証していく方針です。これにより、PCOSに悩む多くの女性にとって、より幅広い治療オプションが提供されることが期待されます。



