香川大病院(香川県三木町)は、前立腺がんの新しい放射性治療薬「プルヴィクト」を用いた治療を開始した。この治療法は、前立腺がんが進行し、ホルモン療法が効かなくなった転移性去勢抵抗性前立腺がんの患者を対象としている。国内では昨年11月に保険適用となり、同病院は昨年末に四国で初めてこの治療を導入した。現在9人が治療を受けており、腫瘍マーカーの値が低下した患者も確認されている。
前立腺がんの現状
前立腺がんは男性に最も多く見られるがんで、国内では年間約10万人が新たに診断され、1万人以上が死亡している。早期に発見され、がんが前立腺内に留まる場合は、手術や放射線治療、または監視療法が行われる。再発や転移が生じた場合には、ホルモン療法や抗がん剤治療が検討される。しかし、進行するとホルモン療法が効かなくなり、転移性去勢抵抗性前立腺がんに至る。国内の新規患者は年間1万人以上と推定され、より効果的な治療法が求められていた。
新治療の仕組み
この治療では、まず転移した部位を特定するために、前立腺がんに特有のたんぱく質「PSMA」に注目する。PSMAに結合しやすい化合物に放射性物質「ガリウム」を結合させた診断薬を投与し、PET検査で転移を確認する。治療対象となった患者には、プルヴィクトを静脈注射で投与する。プルヴィクトはPSMAに結合しやすく、別の放射性物質を含んでおり、6週間ごとに最大6回投与することで、がん細胞を内部から攻撃する。
治療の流れと副作用
投与後は微量の放射線が体内から放出されるため、放射線管理区域の専用病室に1~2日間入院する必要がある。副作用として、赤血球や白血球の減少(骨髄抑制)、腎機能障害、吐き気などが報告されているが、がんの進行を遅らせる効果が期待されている。
導入の背景と今後の展望
プルヴィクトは2022年に欧米で承認され、国内ではノバルティスファーマが昨年9月に厚生労働省から製造販売承認を取得した。香川大病院は昨年12月に導入し、現在60~70歳代の9人が治療中で、腫瘍マーカーが半減した患者もいる。検査に必要なガリウムを精製するには高額な機械が必要であり、四国で検査を受けられるのは香川大病院と四国がんセンター(松山市)のみである。香川大病院は「がん患者にとって生存期間を延ばす可能性のある治療を選べることは希望であり、一人でも多くの患者に新たな選択肢を提供したい」と述べている。



