外国人入国事前審査の対象拡大へ 飛行機乗り継ぎ客や旅客船客も含める
出入国在留管理庁は、外国人の入国可否を事前に審査する「電子渡航認証制度(JESTA)」について、対象を拡大する方針を固めました。これまで主に短期滞在ビザ免除国の入国希望者を対象としていましたが、新たに日本で飛行機を乗り継ぐ客の一部や、旅客船の客も審査対象に加えることになります。これは高市早苗首相が推進する「不法滞在者ゼロプラン」の一環であり、上陸拒否の対象者が入国する「抜け穴」をふさぐことを目的としています。
トランジットを装った上陸を防止
JESTAは、観光などのために日本に短期滞在する際のビザを免除している国・地域(現在74カ国・地域)を対象に、入国希望者の事前審査を行う制度です。2028年度中の導入を予定しており、米国、英国、オーストラリアなどでは既に同様の仕組みが導入されています。欧州連合(EU)も2026年中に開始する計画です。
当初の案では、入国希望者が申請した情報と、犯罪歴や強制退去歴などの上陸拒否理由を照合し、該当する場合は不認証として飛行機への搭乗を阻止すると説明されていました。しかし、その後の検討で、トランジット(乗り継ぎ)を装った不正な上陸を防ぐため、日本を経由する乗り継ぎ客の一部も審査対象に加えることが決定されました。
対象国は省令で定められますが、日本での短期滞在にビザが必要な国のほか、ビザ免除国の中でもタイやトルコなど上陸拒否者が多い国を対象とする方向で検討が進められています。国際競争力の低下を招かないよう、対象者を限定する措置も検討されており、例えば事前審査制度が既にある米国へ向かう乗り継ぎ客は対象外とする案などが浮上しています。
海路の抜け道も封鎖へ
さらに、海路を利用した不正入国を防止するため、入管庁長官が指定した旅客船で入港し、簡易な手続きで一時的に上陸する乗客も事前審査の対象とすることが明らかになりました。これにより、空路と海路の両方で、不法滞在者を未然に防ぐ体制が強化されます。
JESTAの認証を得るには手数料が必要となり、航空会社や船舶運航事業者に対しては、予約者の氏名などの報告義務や、不認証とされた人の搭乗を阻止する義務が課せられます。政府はJESTAの創設などを盛り込んだ出入国管理及び難民認定法(入管難民法)改正案を3月に閣議決定し、特別国会に提出する予定です。
在留審査手数料の大幅引き上げも
今回の入管法改正案には、在留審査にかかる手数料の大幅な引き上げも盛り込まれています。特に注目されるのは、永住許可の手数料が現在の1万円から2026年には20万円へと引き上げられる点です。これは、在留期間に応じて手数料を段階的に引き上げる方針の一環であり、政府が外国人政策を「共生」から「秩序」重視へ転換していることを示しています。
高市首相は20日の施政方針演説で同法案に言及し、「我が国にとって好ましくない外国人の入国を防ぐとともに、問題ない来日客の入国手続きの円滑化を図る」と述べ、制度の目的を強調しました。2025年の新規入国者数は過去最高の約3918万人に達し、その98%を短期滞在の訪日客が占め、うち8割がビザ免除国からの訪問者でした。こうした状況を背景に、政府は入国管理の厳格化を進めています。
国際的な潮流と国内の課題
電子渡航認証制度は国際的な潮流となっており、日本もこれに追随する形で制度導入を急いでいます。しかし、対象の拡大に伴い、空のハブ空港としての競争力維持や、観光業界への影響が懸念されています。また、手数料の大幅引き上げは、特に永住を希望する外国人にとって経済的負担となる可能性があり、今後の議論が注目されます。
政府関係者によれば、不法滞在者ゼロプランは単なる外国人排除ではなく、適正な管理を通じた秩序ある社会の構築を目指すものとしています。しかし、人権団体などからは、過度な厳格化が差別や偏見を助長する恐れがあるとの指摘も出ており、今後の実施においては慎重な運用が求められています。



