成年後見制度の構造問題と「後見族」の実態 元裁判官が語る改革の必要性
成年後見制度の構造問題と「後見族」の実態

成年後見制度の構造的問題と「後見族」の実態

成年後見制度をめぐり、専門職への報酬決定システムや家族排除の構造的問題が浮き彫りになっている。元裁判官で弁護士の森脇淳一氏(68)が、制度の歴史的経緯や現場の疲弊、遺産相続との絡みを詳細に解説し、改革の必要性を訴える。

報酬決定システムの不透明さと不服申立の困難

成年後見制度では、認知症などで判断力が低下した高齢者に代わり、弁護士などの専門職が財産管理を行う。しかし、報酬は後見人側に請求権がなく、裁判官が職権で決定する仕組みとなっている。これは行政事務に近く、後見人や利用者側は不服申立が認められていないため、一度決まった報酬は高すぎても安すぎても覆すのが難しい構造だ。

森脇氏は、この制度が2000年に介護保険制度と同時にスタートした際、当初から「ボタンの掛け違い」があったと指摘する。本来は厚生労働省が福祉として担うべき業務が家庭裁判所に委ねられ、裁判官は福祉の専門家ではないにもかかわらず、何万人もの監督業務を担当し、現場は疲弊しているという。

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遺産相続問題と専門職介入の増加

制度の利用が進む中、遺産相続をめぐる「争族」の道具として成年後見が使われるケースが増えている。親の面倒を見ているきょうだいの一人に対し、他のきょうだいが疑心暗鬼になり、牽制のために後見を申し立て、特定の家族を排除する例がある。

森脇氏は、親族間のもめごとがあると、裁判所は中立な第三者として弁護士などの専門職を選びがちになると説明。これにより、親を支えてきた家族までが排除され、自宅で生活できたはずの高齢者が施設に入れられ、見知らぬ弁護士が財産管理を続ける構造が生まれている。

「後見族」の存在と報酬ビジネスの実態

日本には後見業務の報酬で生計を立てる「後見族」とも呼べる専門職が存在する。1件あたり月2万~5万円の報酬でも、20~30件を抱えれば安定した収入になる。特に身寄りのない高齢者の後見は、事務員に業務を任せれば手間がかからず「おいしい仕事」とされる。

森脇氏は、米国で後見ビジネスをテーマにした映画「パーフェクト・ケア」がヒットしたように、日本でも同様の問題が潜在していると警鐘を鳴らす。

制度改革の展望と課題

現在、国会では成年後見制度の見直しに向けた民法改正案が審議される可能性があるが、報酬決定の仕組みを大きく変える考えはないとされる。森脇氏は、後見業務を「終身」から「有期」にする変更だけでは実態が変わらないと批判。

改革案として、欧米のように裁判所から独立した公的機関の設立を提案。ドイツの「世話人庁」や米国の組織を例に挙げ、福祉の専門家を入れた機関が透明な基準で運営し、報酬も価格表に基づいて決めるべきだと主張する。

具体的な改革の方向性

森脇氏は、後見人の「家族への回帰」と専門組織の設立を目指すべきだと提言。まず親族など推定法定相続人全員を後見人とし、互いに監視させることで専門職の介入を最小限に抑える。身寄りがないケースに限り、公的機関が透明な基準で運営を行うことで、制度の根本的な見直しを求める。

裁判官時代に現場の疲弊を目の当たりにし、弁護士として利用者の悲劇を見てきた経験から、森脇氏は制度の立て付けを根底から作り直す必要性を強調している。

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