選挙動画の世界が急拡大 2年間で再生回数10倍に
2026年の衆院選期間中、YouTube上で選挙関連動画が爆発的に拡大した。政治情報サイト「選挙ドットコム」の調査によると、1月27日から2月8日までの選挙期間中に投稿された選挙関連動画は約9万本に上り、総再生回数は約28億回に達した。この数字は、わずか2年前の2024年衆院選時の10倍もの規模に拡大している。
高市首相動画が突出 個人別で4.5億回再生
政党別の再生回数では、自民党関連動画が約2億3千万回で最多となった。次いで中道改革連合が約1億4千万回を記録した。昨年の参院選で首位だった参政党は、今回は伸び悩む結果となった。
特に注目されるのは個人別の再生回数だ。高市早苗首相(自民党総裁)に関する動画が4億5千万回と圧倒的な数字を記録し、他の政治家を大きく引き離した。専門家は「高市氏は1人で自民党全体を凌駕するほどのコンテンツパワーを持っていた」と指摘する。
サードパーティー動画が8割占める新たな選挙環境
選挙関連動画の投稿者の内訳を分析すると、政党や候補者自身が投稿した動画は全体の2割に満たない。残りの8割は「サードパーティー」と呼ばれる第三者による投稿で、多くがテレビ番組などの動画を編集した「切り抜き系」チャンネルによるものだ。
選挙ドットコムを運営するイチニの高畑卓社長は「SNSで選挙コンテンツを見る流れが加速している。今回の選挙では、高市さんを動画にすれば数字がとれ、数字がとれるから人気が出るという好循環が生まれていた。サードパーティーを巻き込んだ独走状態だった」と分析する。
自民党内では選挙戦略として評価も
自民党内では、高市首相の動画人気が選挙に有利に働いたとの見方が広がっている。「こんな楽なことはない」と評価する声も上がる一方で、逆風にさらされた野党側には動揺が広がっている。
朝日新聞社メディア研究開発センターの調査では、高市首相、自民党、中道改革連合にまつわるYouTube動画の再生回数上位100位を分析。公式チャンネルを除外した結果、高市氏に関する動画が特に高い人気を集めていたことが確認された。
今回の選挙では、従来の選挙運動とは異なる新たな情報環境が形成された。有権者が政治情報を得る手段として、SNS動画の重要性が急速に高まっている現状が浮き彫りとなった。
選挙動画の急拡大は、政治コミュニケーションの在り方そのものを変えつつある。政治家個人のカリスマ性が強調されやすい動画コンテンツの特性が、選挙結果にどのような影響を与えるのか、今後の分析が待たれる。



