社長を装う巧妙な詐欺メールが全国で拡大、LINEグループ作成後に送金要求
社長からのメールと信じ込ませ、指定された口座に多額の資金を振り込ませる新たな手口の詐欺被害が、全国の企業を対象に急増している。警察庁はこの手口を「ニセ社長詐欺」と命名し、警戒を強く呼びかけている。福井県内においても、昨年12月下旬から複数の相談が寄せられており、県警の担当者は「メールが届いても冷静に、本当に社長からの連絡かどうかを確認することが極めて重要だ」と注意を促している。
日刊県民福井に届いた詐欺メールの具体的事例
1月中旬、日刊県民福井(福井市)の取材用共有アドレスに、一見すると社長からの業務指示と思われるメールが届いた。このメールの差出人欄には、実際の社長の名前が表示されていた。件名は「株式会社日刊県民福井」とだけ記載されており、送信元はフリーメールのアドレスであった。
メールの本文には、「業務上の都合により、新しくLINEグループを作成いただきたく存じます」との指示が記されていた。さらに、「他の方は招待せず、作成のみで結構です」と付け加えられており、一見すると社内の秘密裏な業務連絡のように装われていた。
詐欺の手口と心理的追い詰めの特徴
県警の説明によると、ニセ社長詐欺の典型的な手口は、まずメールを受信した社員にLINEグループの作成を指示することから始まる。その後、そのグループ内でのやり取りを通じて、送金を要求する流れが多いという。
この詐欺の特徴は、「新規事業で今日中にお金が必要だ」「早急に振り込んでほしい」など、対応を急かせる文面が多用される点にある。これにより、被害者を心理的に追い詰め、冷静な判断を鈍らせてしまう傾向が強い。
被害が広がる背景と企業規模を問わない標的
福井県内では昨年末から相談が相次いでおり、現場の社員と社長の接点が少ない大企業だけでなく、社員数が限られている中小企業でも被害が確認されている。このことから、詐欺グループは特定の企業を狙うのではなく、無差別にメールを送りつけている可能性が高いとみられている。
企業や社員のメールアドレスは、公式ホームページや何らかの原因で流出した名簿などから入手した上で、権限が強く逆らいにくい「社長」の名前を悪用していると推定される。この巧妙ななりすましが、被害拡大の一因となっている。
県警が呼びかける具体的な防止対策
福井県警は被害防止策として、企業に対して以下の点を強く呼びかけている。
- 社内で送金やSNSを利用した業務指示に関するルールを再確認すること
- LINEグループの作成を指示された場合には、特に注意を払うこと
- メールが届いても一人で判断せず、同僚や上司に相談すること
県警サイバー犯罪対策課の新井大次席は、「不審なメールを受け取った際には、すぐに会社の同僚や警察に相談してほしい。一人で対応しようとすると、詐欺の罠にはまりやすくなる」と訴えている。
この詐欺は全国的な広がりを見せており、企業のサイバーセキュリティ対策の重要性が改めて浮き彫りとなっている。警察庁と各都道府県警は、継続的な注意喚起と対策の強化に取り組んでいく方針だ。