和歌山市の和歌山市民図書館で、戦前に美浜町三尾(旧三尾村)からカナダに渡った日本人らが制作した写真帳「グランドフォークス在留日本人記念 冩眞帖」を題材にした展示が開かれている。2020年から取り組んできた写真帳の復刻作業の成果をまとめた書籍が今春刊行されたことを記念した展示で、30日まで。
写真帳の内容と復刻の経緯
同館の展示担当者によると、明治中期から多くの三尾の住民がサケ漁のためにカナダに移民した歴史がある。写真帳は日本から移り住んだ人々が1946年、カナダ南西部のブリティッシュコロンビア州グランドフォークスという地域で制作したとされる。カナダで生きた証しを残す目的で住民らが自主的に制作したと推測され、グランドフォークス周辺に住んでいた56世帯の家族写真が収められている。このうち約3分の2が三尾出身の世帯だった。
カナダへの移民について調べていた研究者から写真帳の存在について美浜町三尾の移民資料館「カナダミュージアム」に情報提供があり、三尾地区で複数の写真帳が見つかった。2020年から復刻作業が始まり、両国の関係者や研究者らが復刻内容を盛り込んだ書籍「カナダと日本をつなぐパブリック・ヒストリー」にまとめ、今春刊行した。
この書籍には、掲載された家族写真の子孫による寄稿のほか、研究者らによる論文なども掲載。和歌山市民図書館でも所蔵しており、閲覧できる。
展示内容と戦時の歴史
図書館の2、3階で展示。グランドフォークスに定住した日系カナダ人の歴史をパネルなどで解説する。戦時中には敵性外国人とみなされ、居住地を定められた時期もあった。移動を控えた家族が、別の移住者に送った当時の手紙の内容を紹介。「どこに移動させられるのか分からない」「若者たちが家から連れ去られるという噂を聞いて心配している」など、当時の人々の不安な心境がうかがえる。
展示担当者の樋口日菜さんは「和歌山県は、戦前戦後の海外移住者数が全国6番目の移民県。親近感がわく当時の様子が分かる写真を見てもらい、歴史を知るきっかけにしてほしい」と来場を呼びかけた。
開催概要とイベント
観覧無料。午前9時~午後9時まで(最終日は午後5時まで)。問い合わせは同館(073・432・0010)。
13日には、復刻プロジェクトに携わった関係者らによるトークイベントが開かれる。午後1時からの第1部では、研究者らが「三尾のカナダ移民と戦時体験」と題して講演。午後2時15分からの第2部は、三尾やグランドフォークスの歴史に詳しい関係者らがパネルディスカッションを行う。ともに申し込みが必要で、希望者は同館のホームページから。



