九州発のクラフトウイスキーが人気沸騰 焼酎・日本酒の技術で個性豊かな味わいを創造
小規模な蒸留所で丁寧に造られる「クラフトウイスキー」の人気が急速に高まっている。近年の国産ウイスキーブームを追い風に、九州を中心とした各地の酒造会社が相次いで参入。焼酎や日本酒の製造で長年培ってきた経験と技術を存分に生かし、個性豊かなウイスキーを次々と生み出している。
鹿児島の嘉之助蒸溜所 海と砂丘に囲まれたユニークな立地
今月3日、鹿児島県日置市にある「嘉之助蒸溜所」を訪れた。この蒸溜所は、薩摩半島の西岸沿いに47キロにわたって続く広大な砂丘「吹上浜」のすぐそばに位置している。目の前には東シナ海が広がり、海と砂丘の絶景を眺めながらウイスキーを楽しめるという、他にはない環境が特徴だ。
施設はコの字形をした2階建ての建物で、製造エリアに入ると、原料となるモルト(大麦麦芽)の香ばしい香りが漂っていた。同市の焼酎メーカーである小正醸造が2017年に開設したこの蒸溜所には、発酵が終わったもろみから原酒をつくる銅製の蒸留器が3基備えられている。
焼酎造りの技術をウイスキーに応用 独自の熟成方法で個性を追求
熟成に使用する樽は、バーボンなどの洋酒樽に加え、焼酎造りで長年使われていたものを多く活用している。これにより、伝統的な焼酎の風味とウイスキーの特性が融合した、独自の味わいを実現している。
小正醸造は1883年に創業した老舗企業だ。嘉之助蒸溜所の代表を務める小正芳嗣さん(47歳)の祖父であり、2代目社長であった嘉之助さん(故人)は、戦後まもない頃に「安価で粗悪な酒」と見られていた焼酎のイメージを変えようと決意。国内外の蒸留酒造りを熱心に学び、1957年には樽で長期熟成させた米焼酎を売り出した。
祖父の志を継ぎ 世界に通じる蒸留酒を目指す
「鹿児島の焼酎文化を世界に広めたい」という祖父の志をしっかりと受け継いだ芳嗣さんは、海外への販路拡大を目指す過程で、世界に通用する蒸留酒であるウイスキー造りへの挑戦を決断した。本場であるスコットランドを視察し、嘉之助さんがかつて焼酎工場を建てるために購入していた土地に、この蒸溜所を建設したのである。
現在、嘉之助蒸溜所ではシングルモルトウイスキーを製造しており、その品質と独自性が高く評価されている。九州発のクラフトウイスキーは、地元の伝統と革新が結びついた新たな酒文化として、今後も注目を集め続けることだろう。



