データセンター立地に新たな動き 栃木県で誘致競争が加速
企業や組織が大量のデータを保存・管理・処理するための専用施設であるデータセンター(DC)の誘致活動が、栃木県内で目立ってきている。栃木市では年内にも着工が予定されており、宇都宮市と矢板市も準備を進めている状況だ。立地が集積する首都圏では建設反対運動が強まる一方で、電源確保のしやすさや災害の少ない環境が栃木県の大きな売りとなっている。
宇都宮市の戦略 変電所隣接で安定供給を実現
宇都宮市がデータセンター誘致を計画しているのは、同市相野沢町の地域である。JR宇都宮駅から約12キロ北に位置するこの農業地域では、広大な畑が広がっている。予定地の最大の利点は、DCが必要とする大量の電力を供給しやすい点にある。隣接するのは県内の再生可能エネルギーが集まる東京電力パワーグリッドの超高圧変電所で、地中線による直接供給が可能なため、安定性と信頼性が極めて高い。
もう一つの強みは安全性だ。約37ヘクタールに及ぶ広大な建設予定地は浸水想定区域から外れており、周辺には活断層なども確認されていないため、災害リスクが極めて低いと評価されている。周辺は市街化調整区域に指定されて開発が規制されているが、市は地域未来投資促進法を活用して特例の開発許可を受ける方針だ。4月には開発事業者の公募を予定し、2029年には用地買収や造成を開始する計画である。
宇都宮市産業政策課の担当者は「変電所の潜在能力を最大限に生かし、より高い効果が得られる事業者を公募したい」と意気込みを語っている。
矢板市も参戦 特別高圧電線交差で大容量電力確保
矢板市も昨年、地域未来投資促進法を活用して、市南東部の安沢地区にある農地など約48ヘクタールにデータセンターを誘致する方針を公表した。同市商工観光課によれば、「すでに複数のDC関連企業から引き合いがある」という。
同市のアピールポイントも電力の安定供給にある。市内では東西方向と南北方向に2本の特別高圧電線が交差しており、そこから大容量の電力供給を受けることが可能だ。このインフラを最大限に活用し、データセンター事業者を呼び込む構えを見せている。
市場拡大と自治体の期待 栃木市は税収増を見込む
人工知能(AI)をはじめとするデジタル社会の急激な発展を支える基盤がデータセンターである。大量のデータを処理・保存・管理するためのサーバーやネットワーク機器を設置する施設として、その需要は拡大を続けている。
市場調査会社の富士キメラ総研によると、データセンターサービスの2024年の市場規模は4兆180億円に達する。年平均6%程度の拡大が予測されており、2029年には5兆4036億円に成長する見込みだ。この成長市場を背景に、自治体の誘致競争はさらに激化することが予想される。
県内で最初にデータセンター誘致に動いた栃木市では、誘致決定により年間20億円の税収増を見込んでいる。自治体にとっては経済効果が大きく、地域活性化の起爆剤として期待が高まっている。
首都圏では騒音やCO2排出、排熱問題を巡り住民との摩擦が生じているが、栃木県では広大な土地と安定した電力供給、低い災害リスクが強みとなっている。データセンター立地条件の変化を反映し、地方自治体の戦略的な取り組みが今後も注目されそうだ。



