原油輸入停滞で経済に広がる影響、政府は節約要請を検討
イランによるホルムズ海峡の事実上の封鎖により、原油の輸入が滞り、その影響が日本経済の様々な分野に拡大しています。石油関連産業を中心に製品の減産や値上げが相次ぎ、農業や漁業でも燃料の高騰が経営を圧迫しています。今後は電気やガス、航空料金の値上がりも見込まれており、政府は国民に対して石油製品の節約を要請する検討を始めました。
石油化学メーカーで減産が拡大、調達先の変更も
原油から製品を製造する企業では、減産の動きが広がっています。出光興産は、原油から精製されるナフサ(粗製ガソリン)の供給懸念を受け、千葉県と山口県の生産設備でプラスチックやタイヤの原料となる基礎化学品エチレンを減産しています。同社の生産量は国内全体の16%を占めており、影響は小さくありません。
三井化学も3月から千葉県と大阪府の生産設備でエチレンの減産を実施しています。中東に代わり米国やアフリカからナフサを調達するめどが立ったものの、「調達するのは直近で必要な分のみ。調達に向けた努力を続ける」と広報担当者は述べています。
三菱ガス化学は、天然ガスなどから作られ、プラスチックや合成繊維の原料となるメタノールの国内販売用の大半を、出資するサウジアラビアの製造拠点から調達していました。しかし、中東情勢の悪化で供給が途絶え、ベネズエラなどからの調達に切り替えました。輸送距離が延びたため、費用は高くなっています。
値上げの波が食品包装フィルムや建築資材にも
値上げも相次いでおり、三菱ケミカルは食品包装用などのフィルムを21日納入分から500平方メートルあたり1200~2000円引き上げます。日本ペイントは3月19日発注分から建築用のシンナーを75%値上げしました。
納豆を製造・販売する「せんだい」(山梨県)の伊藤英文社長(49)は、「容器などのフィルムは石油由来で、製造過程では灯油を使います。急激に高騰した場合、価格転嫁しないと会社がつぶれる」と頭を抱えています。
農家は燃料費高騰で「泣きっ面に蜂」
日本一のサクランボ生産量を誇る山形県では、農家が悲鳴を上げています。県によると、4月下旬に開花するサクランボは寒さに弱いため、霜や低温による被害を避けようと、ヒーターでビニールハウス内の果樹を暖める生産者がいます。
南陽市の男性(73)は約60台のヒーターを使い、「肥料や資材が値上がりしているのに燃料代まで上がった。泣きっ面に蜂だ」と語ります。3月下旬に1度稼働させると、一晩で灯油500リットルを使って7万円ほどの費用がかかったといいます。
電気・ガス料金や航空運賃にも影響が及ぶ見通し
電気・ガス料金では、火力発電などに使われる液化天然ガス(LNG)などの価格高騰が織り込まれるのは早くて6月からで、今夏以降に段階的に影響が及ぶ見通しです。ただし、4月使用分からは政府の補助金が終了し、値上がりが見込まれています。
全日本空輸と日本航空は、航空燃料の価格に応じて国際線の運賃に上乗せする「燃油サーチャージ」の引き上げを検討し、6月発券分から適用する方向です。
政府は節約要請を検討、備蓄放出で必要量は確保
赤沢経済産業相は3日の閣議後記者会見で、原油の輸入停滞を受けた国民への石油製品の節約要請に関し、「国民経済に大きな影響がない形で、需要サイドの対策を含めあらゆる政策を検討したい」と述べました。
赤沢氏は原油や石油製品について、備蓄の放出などで「日本全体として必要となる量は確保している」との認識を示した一方、「一部で供給の偏りや流通の目詰まりが生じている」とも述べました。石油製品の国際的な需給や価格の動向を踏まえ、節約要請を含めた対策を検討する考えを示しました。
原油価格は急騰、市場の早期停戦期待が後退
2日のニューヨーク原油先物市場で、代表的な指標となるテキサス産軽質油(WTI)の5月渡し価格の終値は、前日比11.4%(11.42ドル)高の1バレル=111.54ドルまで上昇しました。1営業日の上昇幅としてはコロナ禍で市場が乱高下した2020年4月以来、6年ぶりの大きさで、米国とイスラエルが2月末にイランを攻撃して以降の上昇率は66%に達しました。
トランプ米大統領が1日の演説で対イラン軍事作戦の終結時期を明示せず、早期停戦に向けた市場の期待が後退したことが背景にあります。



