日本物理学会が生成AI作成論文の判定ソフトを試験導入、学術界の透明性確保へ
日本物理学会は、発行する学術誌へ投稿された論文の執筆者が生成人工知能(AI)によって作成されたかどうかを判定するソフトウェアを試験導入したことを明らかにした。この取り組みは、海外で問題となっている生成AIを利用した粗悪な科学論文の増加に対応するもので、学術界における研究の信頼性維持を目的としている。
95%以上の精度でAI生成文書を識別
試験導入されたソフトウェアは、国立情報学研究所の越前功教授(情報セキュリティー)が率いる研究チームによって開発された。このシステムは、以下の3つのタイプに分類された論文要旨、合計20万件以上をAIに学習させることで構築されている。
- 人間が作成した論文
- 生成AIが作成した論文
- 人間が作成し、生成AIが校正した論文
ソフトウェアは、文章ごとにこれらのタイプを判定し、その精度は95%以上に達していると報告されている。さらに、公表前の研究内容の流出を防ぐため、インターネットに接続されていない環境でも使用できる設計が採用されており、機密性の高い学術情報の保護にも配慮されている。
生成AIの特性と学術界への影響
越前教授によれば、生成AIは事実に基づいた情報を提供することよりも、語句を自然につなぐことを優先する傾向があるという。この特性により、存在しない論文を捏造して引用するなど、偽情報が混入するリスクが指摘されている。教授は、「研究者がAIによって生成された内容を確認せずにそのまま投稿するケースも考えられる」と懸念を示し、学術界全体での適切なAI利用の必要性を強調した。
日本物理学会の学術誌編集委員長を務める播磨尚朝理事は、このソフトウェアの導入について「生成AIを悪用した論文投稿の抑止力につながれば」と期待を寄せている。学会では、試験導入を通じてソフトウェアの実用性を評価し、将来的には他の学術分野への応用も視野に入れている。
この取り組みは、AI技術の急速な発展に伴い、学術研究の倫理と品質管理が重要な課題となっている現代において、先駆的な対策として注目を集めている。日本物理学会は、透明性の高い研究環境の構築を推進し、国際的な学術コミュニティにおける日本の役割を強化することを目指している。



