食品廃棄物を電力に変える 相模原発の革新的な循環モデル
首都圏には、独自の技術やサービスで地域経済を支える中小企業が数多く存在します。2025年度のしんきん優良企業に選ばれた神奈川県相模原市の「さがみはらバイオガスパワー」は、食品廃棄物を電力に変換する画期的な事業で注目を集めています。
365日稼働するバイオガス発電プラント
同社は2021年8月に設立され、循環型経済の実現を目指して活動を続けています。本来なら焼却処分される運命だった余剰食品を原料に、365日休むことなく発電を続けるプラントを運営。災害時には地域の明かりを灯す重要な役割も担っています。
食品ロス問題の解決に貢献するこの事業には、全国から自治体や企業の視察が相次いでおり、環境負荷軽減と経済的合理性を両立するモデルとして評価されています。
小学生時代からの環境問題への想い
高橋巧一社長(59)は、小学生時代にシートン動物記やドリトル先生シリーズを読み、野生動物の絶滅に強い危機感を抱いたことが環境問題への関心の原点だと語ります。その後、ボランティア活動を通じて知った国の規制や大企業の壁を乗り越え、自らの手で社会を変えようと決意しました。
発電の原料となる食品廃棄物は、神奈川県内や東京・多摩地区の食品企業などから、焼却処理よりも安価な費用で受け入れています。道一本を挟んだ「日本フードエコロジーセンター」で破砕処理されたスムージー状の食品廃棄物は、同社のメタン発酵タンクでバイオガスを発生させ、発電に利用されます。
廃棄物から肥料まで 完全な循環システム
発電後に残る消化液は、発電時の廃熱を利用して乾燥させ、肥料に生まれ変わります。この肥料は農業協同組合(JA)や耕作農家に安価で販売され、農業分野でも循環型経済に貢献しています。
高橋社長は「家庭やスーパーなどの食品ごみを焼却処分するのは税金です。わが社の発酵技術事業は環境負荷を減らし、処理コストも削減できます。さらに、輸入に依存する飼料や肥料、エネルギーを国内で生み出すことが可能です」と説明します。
自治体との連携で社会の仕組みを変革
一般廃棄物の大半をホテルや旅館から出る食品が占める箱根町では、同センターの活用を検討しています。また、焼却施設の建て替えを考える自治体に対しては、同様の施設を組み込む仕組みづくりから提案を行っています。
国も協力する発電プラントですが、利益はこれからという段階です。それでも高橋社長は「会社ではなく、社会の利益を事業の念頭に置いています」と強調。「循環型経済を実現するために、社会の仕組みを変えることが重要です」と語り、持続可能な社会づくりへの強い信念を示しています。
この取り組みは、単なる環境技術の導入ではなく、経済システムそのものの変革を目指すものであり、地域から全国へと広がる可能性を秘めています。食品廃棄物という社会課題をエネルギー資源に転換する相模原の挑戦は、日本の循環型経済実現に向けた重要な一歩となるでしょう。



