旭化成、グリーン水素製造装置で世界市場に挑戦 中国勢に対抗し欧州へ本格展開
旭化成、グリーン水素装置で世界市場に挑戦 中国勢に対抗

旭化成、グリーン水素製造装置で世界市場へ本格進出

旭化成は、再生可能エネルギー由来の「グリーン水素」製造装置の商用化を積極的に推進している。グリーン水素は製造から利用までの全過程で二酸化炭素(CO2)を排出しない次世代エネルギーとして注目を集めており、同社は高い技術力と信頼性を武器に、台頭する中国勢に対抗する戦略を展開している。

アルカリ型技術の優位性と大規模化の強み

グリーン水素製造の社会実装が進む技術には、主に「固体高分子膜(PEM)型」と「アルカリ型」の2種類が存在する。PEM型は純水を電気分解するのに対し、アルカリ型はアルカリ溶液を使用する。旭化成が採用するアルカリ型は、装置の大規模化が容易という特長を有している。

同社はもともと、食塩水を電気分解して塩素などを製造する食塩電解システムの供給実績があり、この技術基盤を活かして2010年から水素製造装置の開発に着手した。2020年には福島県浪江町の「福島水素エネルギー研究フィールド」において、当時世界最大級となる10メガワットの大型装置の運転を開始している。

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この装置は縦5メートル、横幅20メートル、高さ3メートルほどのコンテナサイズで、内部には170枚のセルと呼ばれる部材が組み込まれている。装置下部のタンクに貯蔵されたアルカリ溶液が循環する仕組みで、水素製造装置自体は静粛に稼働する。周囲には多数の太陽光パネルが設置され、再生可能エネルギーを供給。荒天時には一般送配電網へ迅速に切り替えるシステムを備えている。

2023年からは改良を経た商用化モデルの運転を継続しており、約1万4000時間にわたる安定稼働を実現。製造された水素はフィールド内の貯蔵・供給設備を通じて、県内の工場などで実際に利用されている。

複数装置の一括制御技術と実証成果

アルカリ型装置は、再生可能エネルギーだけで運転する場合、出力変動に応じて頻繁に起動・停止を繰り返す必要があり、内部部材の損傷リスクが課題となる。さらに旭化成は、10メガワット装置を10台並べて100メガワット規模へ拡大する構想を持っており、各装置をパイプで接続した一括制御技術の確立が不可欠だ。

こうした課題に対応するため、同社は2024年から川崎市の自社工場内で実証実験を開始。0.8メガワットの装置4台を並列配置し、同時運転しながら電気出力を様々に変化させる試験を実施。実際の運用で想定される電気変動に対しても、安定した運転が可能であることを確認した。

旭化成は水素製造装置に必要な部材を自社開発しており、実証で得られた知見を迅速に製品改良に反映できる体制を整えている。この垂直統合型の開発体制が、競争力強化の源泉となっている。

欧州市場をターゲットに中国勢に対抗

グリーン水素製造分野では、従来欧州企業が積極的な投資を展開していたが、近年の世界的なインフレにより装置部材や再生可能エネルギーの価格が高騰。欧州勢による事業見直しや撤退が相次いでいる。その隙間を埋めるように存在感を増しているのが、主にアルカリ型装置を手がける中国メーカーだ。

中国政府の巨額補助金を背景に生産能力を急拡大させており、国際エネルギー機関(IEA)によれば、世界の生産能力の約60%を中国勢が占めているという。

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これに対し旭化成の強みは、長期間にわたる実運用実績と、実証実験に基づく豊富な技術知見にある。装置の安定性だけでなく、水素製造効率の向上も着実に進めてきた。水電解企画室の片山沙綾香氏は「大規模装置の継続的使用を求めるニーズに対して、信頼性の高いデータを提示できる。長期運用を見据えた包括的なサポートをワンストップで提供できる点も競争優位性だ」と説明する。

同社はこれまで世界規模で食塩電解事業を展開しており、既存顧客から「将来的な市場拡大を見越して水素製造に参入したい」との声が寄せられているという。

当面のターゲットとして視野に入れているのは欧州市場だ。脱炭素への取り組みに熱心な欧州では、着実に市場が拡大していくと見込まれている。昨年にはフィンランドの水素製造プロジェクトへコンテナ型装置の納入が決定するなど、販路拡大に着手。2030年前後を目処に、水素関連事業で1000億円の売上達成を目標に掲げている。