曲げられる太陽電池が国内初商用化、積水化学が新時代を切り拓く
積水化学工業は、次世代型の「ペロブスカイト太陽電池」の販売を開始しました。この太陽電池は薄くて曲げられるフィルム型が特徴で、これまで太陽電池を設置できなかった場所でも発電が可能になります。同社によると、フィルム型での商用化は国内初の試みとなります。
従来型との違いと新たな可能性
現在、太陽電池市場の大半を占めるのはシリコンを使用した従来タイプです。光エネルギーを電気に変換する効率は14~20%程度が一般的で、重量があるため設置場所が限られていました。
一方、日本発の技術であるペロブスカイト太陽電池は、フィルム型でも変換効率が15~20%程度とシリコン型に匹敵します。さらに軽量で柔軟性があるため、重さに弱い体育館の屋根や建物の壁面など、多様な場所への設置が可能になります。
主原料となるヨウ素は国内で調達できるため、低コストでの製造も実現可能です。この点が、持続可能なエネルギー供給システムの構築に貢献すると期待されています。
大規模投資と将来展望
積水化学はこの事業に約3100億円を投資し、そのうち1600億円は政府からの補助金を受けています。3月末から自治体などへの販売を開始し、2027年度には量産化して一般販売を目指します。
具体的な設置場所としては、民間の工場や倉庫の屋根・外壁が想定されています。2030年度までに、原子力発電所1基分の発電容量に相当する年間100万キロワット分の生産を計画しています。
街全体を発電所に変える構想
清水郁輔社長は2月の就任会見で、次のように語りました。「ペロブスカイト太陽電池が世の中に普及すれば、街全体が発電所になるという構想を本当に実現したいと考えています。当社の封止技術と塗工技術の強みに加え、原料を国内で調達できる優位性を活かしていきます」
この技術は、東京国際クルーズターミナルの柱に巻き付けられた実証例でもその可能性が示されています。従来の太陽電池では設置が困難だった曲面や狭い空間でも、柔軟なフィルム型ならば効率的に発電できるのです。
市場への影響と今後の展開
国内では東芝やパナソニックなどもペロブスカイト太陽電池の開発を進めており、競争が激化することが予想されます。しかし、積水化学が先行して商用化に踏み切ったことで、再生可能エネルギー市場に新たな風が吹き始めています。
この技術が普及すれば、都市部のビルや住宅、公共施設など、あらゆる建物が発電所として機能する未来が現実のものとなります。エネルギー自給率の向上やCO2排出量の削減など、環境面でのメリットも大きいでしょう。
積水化学の挑戦は、単なる新製品の開発ではなく、エネルギー供給の根本的な変革を目指すものです。2026年を目標に掲げる「街全体を発電所に」というビジョンが、どのように実現されていくのか、業界内外から注目が集まっています。



