東京経済 渋谷区に本社を置くCradle(クレードル)は、企業のダイバーシティ推進を支援するサービスを展開している。研修動画や医師直結の相談窓口などを通じ、社員の多様なニーズに対応。代表取締役社長の尾嵜優美(スプツニ子!)氏(41)は、共働き世帯の増加や働く人の価値観の変化を踏まえ、経営課題として両立支援に取り組む必要性を強調する。
「両立経営」とは何か
Cradleが提唱する「両立経営」は、育児や介護、健康上の制約を働く人の前提として捉え、能力を最大限引き出すために組織の構造や機能を再設計する考え方だ。スプツニ子!氏は、昭和時代の「24時間働けますか」という価値観に適合できる人はほとんどいないと指摘。従来は1人分の仕事と1人分の専業主婦の役割だったが、現代の共働き世代は2人分の仕事に加え、家事や育児などの3人分の負担を2人で回していると説明し、長時間労働が日本の少子化の最大要因だと訴える。
アーティストから起業へ
スプツニ子!氏はアーティストとしても活躍。2010年に公開した映像作品「生理マシーン、タカシの場合。」は世界中で反響を呼び、生理や更年期などの健康課題に対する社会的支援の必要性を広めた。日本で生まれ育ち、英国の大学で学び、米国の大学で教鞭を執るなど国際的に活躍する中、2018年ごろに欧米と比較して性別役割分業が根強い日本の状況に焦りを感じ、2019年にCradleを設立。準備期間を経て2022年にサービス提供を開始した。
提供サービスの内容
Cradleのサービスは、これまでに国内約80社が導入。毎月2回のセミナーに加え、男性育休や介護、更年期など約200テーマの研修コンテンツを提供。さらに、医師にチャットで相談できる「健康相談サービス」も展開している。導入企業からは、「研修で自分だけではなかったと思えた」「社内で会話が増えた」との声が寄せられている。利用前後のパフォーマンス改善率は11%というアンケート結果も得られた。
導入企業の事例
これまで主に男性向け支援に偏っていた企業が、女性管理職比率向上のためにCradleのサービスを導入するケースや、男性更年期や栄養学など幅広いコンテンツを活用するケースもある。スプツニ子!氏は、企業との対話を通じて、価値観の違いは男女間ではなく「昭和世代対令和世代」の問題であることに気づいたと語る。マネジメント層が依然として昭和型の無制約労働を求める結果、能力のある従業員の離職や生産性・競争力の低下を招いていると警鐘を鳴らす。
今後の展望
Cradleは導入企業をさらに増やし、多様な人材の活躍に本気で向き合う企業を増やしたいと考えている。スプツニ子!氏は、両立経営が企業の持続可能な成長に不可欠だと強調し、今後もサービスの充実を図る方針だ。



