サンドラが考察「ストーカー殺人」なぜなくならない?できる予防策とは
サンドラが考察「ストーカー殺人」なぜなくならない?予防策は?

先進国で人権を重視する社会であっても、定期的に発生する悲劇がある。それは「ストーカーによる殺人事件」だ。多くの場合、加害者は男性で、被害者は女性である。ドイツを含む欧州では、この傾向を近年「フェミサイド」という言葉で表現するようになった。フェミサイドとは、女性が女性であるがゆえに殺されることを指す。こうした事件の背景には、一部の男性が妻や交際相手を「自分の所有物」と見なす考え方がある。女性が自らの意思で男性のもとを去っても、男性はそれを理解できず、恨みへとつながるのだ。

池袋ストーカー殺人事件

今年3月、東京・池袋のサンシャインシティ内にあるポケモンキャラクターグッズ専門店で、販売員の女性が男に刺殺される事件が発生し、日本中を震撼させた。加害者の男と被害者の女性はかつて交際していた。女性は長年ポケモンセンターで働く夢をかなえたが、男は「向いていない」と仕事をやめさせようとするなど、束縛が激化。女性が交際を終了させると、男はつきまといを繰り返し、警察はストーカー規制法に基づき接近禁止命令を出していた。しかし、男は命令を無視して女性を刺殺し、その場で自殺した。

ドイツでも同様の事件

恐ろしいことに、似たような事件は多くの国で起きている。筆者の母国ドイツでは、南西部の自動車大手のコンプライアンス部門に勤務する女性が、交際相手だった同僚の男の束縛に耐えかねて交際を終了したところ、男がストーカー化。警察が接触禁止を言い渡したが、男は女性を殺害し、警察官に追われて自殺を図った。2025年3月の事件だ。ドイツ連邦刑事庁によると、2024年には132人の女性が殺害され、2025年には88人が殺害されている。この事件が特に衝撃的だったのは、被害者が法律家だったからだ。法律に詳しく、事前に警察や弁護士に助けを求めていたにもかかわらず、殺害されたのだ。

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「男性と交際しないほうがいい」

ドイツのメディアは「男性による女性の殺害」に焦点を当て、専門家の意見を紹介している。今年4月、ドイツ刑事警察連合の会長Dirk Peglow氏がZDFのニュース番組で「統計を見ると、女性は男性と交際しないほうが良いでしょう。女性は肉体的・精神的な暴力の被害者になる危険性が高まります。植え込みから飛び出てくる見知らぬ男性よりも交際相手の方が危険です」と発言し、話題になった。ドイツでは夏場、一人で歩く女性が植え込みから襲われる危険が認識されているが、実際には「身近な男性」の方が危険だというのだ。

電子足輪の効果

ドイツではフェミサイドを防ぐ法律が追いついていないとされる。男性が妻や交際相手を殺害しても、「Totschlag(故意ではない殺人)」と見なされ、懲役5年と軽い刑罰で済むケースがある。本来は「Mord(故意の殺人)」とすべきだとの声が上がっている。一方、スペインでは2009年から、女性に暴力をふるった男性にGPS付き電子足輪を着用させ、女性に近づくと通知が行くシステムを導入。現在約1万3千人の女性がこの保護下にあり、殺害されたケースはゼロだ。スペインは欧州で最も女性暴力対策が進んでおり、5年間で10億ユーロを費やしている。ドイツでも2025年11月、刑務所出所後のケースに加え、「他人の自由を脅かす人」にも電子足輪着用を可能にする法案が作成され、早ければ2027年に施行される。ただし、24時間監視のための人員不足が懸念されている。

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ストーカーとなる男性の前兆

ストーカー殺人について「悪いのは加害者」というのは当然の前提だ。その上で、女性が危険な前兆を見極めることはできるだろうか。池袋事件では、男が女性に「ポケモンセンターで働くのをやめろ」と言っていた。ドイツの事件でも、男が女性の旅行を禁止するなど行動制限をかけていた。Stern誌に掲載された別の事件では、夫が妻の友人との交流、兄弟との連絡、両親との面会を長年にわたり禁止。バイク免許の取得も禁じた。女性が別れ話をしたところ、殺害された。これらの事例から、交際前に相手が仕事や趣味、交友関係に口出しし「僕のためにやめてほしい」と言う場合、女性は警戒すべきだ。専門家はフェミサイドの背景に「セクシズム」「ミソジニー」に加え「古くさいジェンダー観」があると指摘する。「僕のために仕事をやめて」「趣味をやめて」といった言葉を美化せず、危険な兆候と捉えることが重要だ。もちろん、古い価値観を持つ男性全員が暴力をふるうわけではないが、殺人に至った多くの男性がそうした考えの持ち主だった。理想はスペインのように国を挙げて女性を守る体制を整え、長期的には「女性は自分で決める権利がある」という認識が社会全体に広がることだ。