福岡航太朗七段が語る棋聖戦の舞台裏と未来への決意 次世代旗手の葛藤と成長
福岡航太朗七段が語る棋聖戦の舞台裏と未来への決意

棋聖戦の舞台裏で若き棋士が語る葛藤と決意

一力遼棋聖と芝野虎丸十段が激突する第50期棋聖戦七番勝負は、現在栃木県日光市で第4局が行われています。現時点で一力棋聖が2勝1敗とリードしており、この一戦は棋聖の5連覇達成か、芝野十段の星取りをタイに戻すかの重要な局面となっています。

初めての七大タイトル戦帯同で感じる重み

今回の新聞解説を担当するのは、20歳の若き棋士・福岡航太朗七段です。七大タイトル戦の番勝負に帯同するのは今回が初めてとなります。2024年の竜星戦優勝、2025年の名人戦リーグでの活躍、そして棋聖戦Cリーグ優勝など、着実に実績を積み上げてきた福岡七段ですが、意外な言葉を口にします。

「今年は、気持ちを込めすぎずに対局に臨もうと思っています」と明かす彼の背景には、「このままではトップに届かない」という強い危機感があると言います。次世代を担う旗手は、試行錯誤の日々を送っているのです。

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破竹の進撃と直面した壁

東京都出身の福岡七段は、一力棋聖や芝野十段も通った洪清泉四段の道場で腕を磨き、小学4年からは韓国へ渡って修業を積みました。中学1年でプロの卵である「院生」になると、驚異的な114連勝を記録し、わずか半年ほどでプロ棋士となりました。

プロ入り当初は「3年以内にタイトル挑戦したい」と意気込んでいましたが、タイトル獲得にはなかなか手が届きませんでした。毎年6〜7割の高勝率を維持しながらも、最も重視していた新人王戦では「負けることを重く考えすぎて、手が空回りしていました」と振り返ります。

竜星戦優勝や名人リーグでの活躍についても、「自分への期待値で言えば、10歳代で七大タイトルに挑戦したかった。でも、トップ棋士に比べて足りない部分が多いと実感しました」と率直に語ります。

戦術の進化と心境の変化

最近、福岡七段が戦術面で挑戦しているのは「早打ち」です。序盤で持ち時間を節約し、急所の局面で時間を有効に使うことを心がけていると言います。

「早打ちの芝野十段らと打つと、プレッシャーを感じます。打つ手の内容と持ち時間の使い方という戦術、どう結果に結びつけるか、ずっとそのバランスを考えています」

昨年12月に20歳になったばかりの福岡七段は、心境の変化にも触れます。「10歳代はイケイケどんどんで、対局に気合を入れすぎていました。でも、最近は、楽しむぐらいのつもりで対局した方が結果が出ていると気づきました。10歳代ではたどり着けなかった気持ちですね」

柔和な表情からは、積み重ねてきた確かな自信が感じられます。「もちろん負ければショックは大きいです。でも、気持ちを軽くして挑みたい。一力棋聖も、芝野十段も、(タイトル戦で)待っていると思う。早く打ちたい」と語ります。

世界を目指す新たな動機

幼少期に韓国で修業した経験から、福岡七段は早くから世界戦を意識してきました。近年は特に、「世界に出て行かないと注目してもらえない」と強く感じるようになったと言います。

「国内ではあまり人気がないスポーツなどでも、オリンピックでメダルを取れば見てもらえる。一力棋聖の応氏杯優勝時にも感じましたし、結果を残していけば変わっていくんじゃないか」

昨年は日本代表として世界戦に出場しましたが、8戦全敗という苦しい結果に終わりました。「対戦相手の名前を見れば妥当だが、それでも1戦も勝てなかったのはショックでした」と振り返ります。

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ここ1、2年は日本の棋士が世界戦で上位に進出する機会も増えていますが、福岡七段は自身の課題をこう分析します。「芝野十段や井山裕太碁聖のような構想力、一力棋聖の計算力のような武器がない。弱点が少なく、オールマイティーに能力が高い中韓の棋士に似た碁の僕は、全体的に力を伸ばすしかない」

それでも、世界で戦える棋士になるという夢の大きさは、決して変わっていません。棋聖戦初帯同の舞台で、若き棋士は新たな一歩を踏み出そうとしています。