NHKが昨年8月に放送したスペシャルドラマ「シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~」の劇場版として製作される映画「開戦前夜」について、製作委員会は6月11日、公開予定に変更はないとする声明を公表した。この声明は、ドラマ内で描かれた総力戦研究所所長の描写を巡り、遺族から抗議や訴訟が提起されていることを受けたものだ。
ドラマの内容と遺族の反応
本作は、日米開戦前に設置された「総力戦研究所」を題材とし、所長が若手研究者に対し、政府にとって都合の悪い報告を差し控えるよう圧力をかける人物として描かれている。これに対し、実際に総力戦研究所長を務めた陸軍中将・飯村穣氏の孫で元外交官の飯村豊氏は「祖父の名誉が傷つけられた」としてNHKに抗議。番組制作に関わったNHKや脚本・演出を担当した石井裕也監督らを相手取り、損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。さらに昨年12月27日には、映画の公開中止を強く求める声明も発表している。
製作委員会の主張
一方、映画の製作委員会は今年6月1日に、映画を7月31日に公開する予定だと発表。今回の声明では、飯村氏の主張に対し「一方的な見解に基づくものであり、本製作委員会として断じて受け入れることはできない」と反論した。その上で、飯村氏が大切にしている人物像や心情を軽んじる意図はなく、これまでも複数回にわたり協議を重ね、フィクションであることの明示や誤解防止のための措置を講じてきたと説明。映画版でも同様の措置を取っていると強調した。
作品の性質に関する説明
製作委員会は、本作が「歴史的事実に着想を得たフィクション」であり、描こうとしているのは「開戦を止められなかったという、当時の社会の雰囲気」だと説明。飯村氏の祖父は本作に登場せず、その人格や人物像を描く意図もないとし、作品を「歴史捏造作品」と断定することは内容や制作意図を正確に踏まえたものではないと主張した。また、公開を中止することは、歴史的事実や実在の組織・事件を題材とする表現活動に萎縮をもたらし、これまで当たり前のように見られてきた歴史ドラマや社会派作品の制作・公開が困難になる恐れがあると訴えた。
遺族側の反応
飯村氏は6月11日、朝日新聞の取材に対し、「納得できない。祖父の名誉を毀損し、歴史を捏造しているという思いは変わらない。係争中の裁判などで主張していく」と述べている。



