名作戯曲「ピーターパン」をヒロイン・ウェンディの視点から見つめ直したせりふ劇「ウェンディ&ピーターパン」が再演される。昨年、ロンドン・バービカン劇場で現地キャストによって上演された際にも音楽を手がけたかみむら周平、映像を担当した上田大樹に作品に込めた思いを聞いた。
かみむら周平「俳優の表情見て一気に書き上げた」
作品の舞台は、20世紀初頭のロンドン。少女ウェンディが、いなくなった末の弟トムをピーターパンの導きでネバーランドへ捜しに行く物語だ。英国の名門ロイヤル・シェークスピア・カンパニーの新作として2013年に初演され、21年には英演出家ジョナサン・マンビィの手で日本キャストによるワールドツアー版が東京で上演された。そのとき、新たに起用されたのが音楽のかみむらと映像の上田だ。「劇場のサイズ感が初演と変わるので、新しいものを作ってほしいということだった」と、かみむらは参加の経緯を振り返る。
「稽古場にいる作曲家」を自認するかみむらは、マンビィ演出の「るつぼ」「民衆の敵」などでも音楽を担当。作曲方法は独特で、稽古場で俳優の芝居を見て即興で曲を演奏し、後でオーケストラ用に譜面を書き分けていくという。「例えば『待って』という一言のせりふでも、俳優や演出によって言い方は変わりますよね? そのニュアンスに沿った曲を作りたい」。今作のメインテーマも稽古場で生まれた。稽古が始まって2週間。当時ピーターパン役を務めていた中島裕翔が一人残るラストシーンで、メロディーが浮かんだ。「切ない、何とも言えない表情を見て一気に書き上げました」
上田大樹「俳優が違うとこんなに違うんだ」
映像の上田は、ナイロン100℃や劇団☆新感線、宝塚歌劇団など、スペクタクルな演出を得意とする劇団からのオファーが引きも切らない。今作は、ほとんどの場面で舞台に何かしらの映像を映し出したという。「かなりしっかりとした子ども部屋のセットがある。それを生かしつつ、森にしたり、海にしたり。映像で拡張していく感じ」。大切にしたのは、「ピーターパン」ではなく、「ウェンディ&ピーターパン」であるという点だ。「冒険譚というよりは、ウェンディを中心に何かをちょっとずつ失っていく人たちを描いた、大人っぽくほろ苦い作品。だから、繊細に作っていった」
21年のワールドツアー版は、英リーズ、ロンドンで現地キャストによって上演され、好評を博した。「自分の音楽が世界に行くというのが、この仕事を始めたときからの目標だったので、うれしかった」とかみむらは語る。上田は、「リーズで上演されたときに不思議な感じがしました。演出、ビジュアル、音楽は同じなのに、俳優が違うとこんなに違うんだと面白く感じる自分がいました」とほほえんだ。才能あふれる2人のクリエイターに今後も注目したい。
今回はウェンディを芳根京子、ピーターパンを渡辺翔太が演じる。東京・新宿のシアターミラノ座で12日~7月5日。(電)03・3477・3244。



