九州発トップ 九州発けいざい 九州発スポーツ 九州発の企画連載 「きれいになってくれ」念じながら何度も鉛筆を走らせ描いた天草四郎…平和だからできる「祈りに似た作業」 2026/06/04 09:59 #道あり 鶴田一郎さん
画家 鶴田一郎さん<8>
フリーのイラストレーターとして歩み出してから、今年で50年となる。今も全国で年12回ほど個展を開催。出身地の熊本県で開催される「天草ほんどハイヤ祭り」や「山鹿灯籠まつり」のポスターを毎年手がけ、化粧品メーカー「ノエビア」のカレンダー用イラストを描き続けている。
「天草四郎―祈り―」(2002年) どんな作品を描くときも、何度も何度も紙に鉛筆を走らせ、“自分の線”を見つけ出す。その作業が「祈りに似ている」と思うようになったのは、40歳代後半のとき、同県本渡市(現天草市)から「天草四郎を描いてほしい」と依頼されたのがきっかけだった。
「天草ほんどハイヤ祭り」のポスターの絵を描く鶴田さん(4月28日、京都市下京区で)=河村道浩撮影 天草四郎は、キリシタン農民が蜂起した島原の乱(1637~38年)を率いた総大将で、美少年だったと伝わる。それまで男性を描いたことはなかったが、「絵を描く行為は平和だからこそできる。平和への祈りの象徴となるような絵にしよう」と引き受けた。アトリエで理想の線を探りながら作品に向かっていたとき、「きれいになってくれ、きれいになってくれ」と念じる自分の姿が、十字架を手にした天草四郎の祈りの姿と重なっていることに気付いた。
なぜ、「美しさ」を追い求めるのか。
この問いに対する答えは、鶴田さんの作品に常に流れるテーマである。彼は、描く対象の内面から発せられる美しさを引き出すことに徹してきた。特に天草四郎を描いた経験は、その後の創作活動に大きな影響を与えた。平和な時代だからこそ、祈りを込めて線を引くことができるという信念が、彼の作品の根底にある。
現在も、鶴田さんは毎日アトリエに立ち、鉛筆を握る。その手の動きは、まるで祈りのようだ。彼の作品は、見る者に静かな感動を与え、平和の尊さを思い起こさせる。



