スモーキングルーム第260回:鳥の巣の痕跡とサングラスの軍人
スモーキングルーム第260回:鳥の巣の痕跡と軍人

次の日、鳥の巣の部屋はすっかり空っぽになっていた。金ボタンが眠そうなフロント係から聞いた話では、夜明け前に鳥の巣がフロントへやってきて電話を借り、約一時間後に到着した車に乗ってホテルを去ったという。フロント係は、年明けまでの宿泊費を前もって受け取っていたため、引き留めなかったと説明した。雪で覆われた道には、森へと向かう車の轍がくっきりと残されていた。

兎耳の悠然とした朝

隣の部屋に滞在していた兎耳は、のんびりと朝食を済ませ、荷物をまとめ、いつものように鼻歌を歌いながら悠々とホテルを後にした。見送りに出た金ボタンには一瞥もくれなかった。

壁に残された数字

鳥の巣の部屋には、チップの一枚すら残されていなかった。しかし、清掃係が壁に六桁の数字が書き殴られているのを発見した。それは書き物机が接する壁の下部という、一見しただけでは気づかない場所だった。金ボタンは、鳥の巣が収容所にいた頃の番号ではないかと推測した。煙はその部分を切り取り、業者に壁紙の張り替えを依頼した。

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クリスマスパーティーでの邂逅

連合国軍がホテルで主催した聖誕祭(クリスマス)のパーティーで、金ボタンはサングラスの軍人を見つけ、鳥の巣の宿泊費を多く受け取っていることを伝えた。

「取っておけ」と、サングラスの軍人は泡立つ酒に顔をしかめながら言った。「いろいろ迷惑もかけたろう」

金ボタンは少し迷った後、「お伝えしたいことがございます」と声を潜めた。しかし軍人は押しとどめるように片手を上げ、「パーティーを楽しめ。戦場では塹壕でツリーを作ったものだ」と言い、色とりどりに光るリボンで包装された小箱を「お嬢ちゃんに」と金ボタンに手渡した。そして煙草を咥え、金ボタンの横を通り過ぎながら低く呟いた。

「Jによる悪魔の残党狩りは見過ごすよう言われている」

聞き返す間もなかった。賑やかな晩餐室に立ち尽くす金ボタンに、煙が銀の盆を差し出す。近くで笑いさざめく客たちの空いたグラスや汚れた皿を、機械的に盆に載せていく。銀の盆はみるみるうちに埋まっていく。天使の格好をした村の子供たちが讃美歌を歌い、森の樅の木で作られたツリーの下では、砂糖煮の娘がジャムを挟んだクッキーを頰張っている。金ボタンと目が合うと、「やくそく」と小さな唇でなぞった。てっぺんの大きな星はあたしにちょうだい、とお願いされていたのだ。金ボタンと煙は、紙で作った星の中に映画のチケットを隠していた。

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