高市政権の外交方針FOIP改定、識者が指摘する課題と日本の進むべき道
高市政権FOIP改定、識者が指摘する課題と日本の進むべき道

高市早苗首相は5月、提唱から10年を迎えた外交方針「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を改定した。法の支配を重んじる国々の連帯を広げる取り組みだが、FOIPの推進に欠かせない米国がイラン攻撃に踏み切るなど、ルールに基づく国際秩序は揺らいでいる。新しいFOIPをどう評価し、日本外交はどのような方向に進むべきなのか。神奈川大学・大庭三枝教授(国際関係論)と神戸大大学院・簑原俊洋教授(日米関係)に聞いた。

自由で開かれたインド太平洋とは

2016年に安倍晋三首相(当時)が提唱。中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に対して、ルールを尊重する連帯を広げることを目指し、米国も外交方針として取り入れた。新たなFOIPも包摂性や法の支配といった基本理念は維持する。インド太平洋地域の各国が「自律性」と「強靱性」を高めるべきだとして、重要物資のサプライチェーン強靱化といった経済安全保障を重点項目に位置づけた。

大庭三枝教授の見解

「日本が直面する危機、抜け落ちている」

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新たなFOIPを表明した高市首相は、「厳しい国際情勢」と主張するが、具体的な言及はなかった。「経済安保など三つの柱に絞って、具体的な協力項目を示したことは評価している。ただ、なぜいま新しいFOIPが必要か、日本がどのような危機に直面しているのかという話が抜け落ちているのは残念だ」と指摘する。

日本が直面する危機とは何か。「力による現状変更を行う恐れがある国々の台頭や、国際秩序の基盤である法の支配が弱体化していることだ。特に米国の行動が予測不能になり、同盟国としての信頼性が問われている」と述べる。

簑原俊洋教授の見解

「米国の変容に対応を」

簑原教授は、米国の変容がFOIPに与える影響を強調する。「米国はイラン攻撃など、ルールよりも自国の利益を優先する行動を取っている。日本は米国に過度に依存せず、他のパートナーとの連携を強化すべきだ」と提言する。

また、新FOIPの経済安全保障への重点化については、「重要だが、それだけでは不十分。軍事面での抑止力強化や、インド太平洋地域の開発協力も同時に進める必要がある」と指摘する。

今後の日本外交の方向性

両教授とも、日本の自律性と強靱性の向上が不可欠と一致する。大庭教授は「日本が直面する危機を明確にし、国民や国際社会と共有することが第一歩だ」と述べる。簑原教授は「米国との同盟を維持しつつ、欧州やASEANなどとの関係を多層化し、柔軟な外交を展開すべきだ」と提言する。

新FOIPは、これまでの理念を引き継ぎつつ、経済安全保障を前面に打ち出した点で評価されるが、米国の変容や国際秩序の揺らぎに対する具体的な危機認識が欠けているとの指摘がある。日本がどのように対応するかが、今後の外交の成否を分けるだろう。

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