農地保全交付金で2億2千万円の過大支給 転用済み土地にも不適切交付
農地の保全を目的として農家や地域住民に支給される国の交付金について、会計検査院が詳細な調査を実施した結果、重大な問題が明らかになりました。宅地や駐車場に転用されていた土地、あるいは適切な管理が行われていない農地に対して、本来支給されるべきではない交付金が過大に交付されていたのです。
17道県273市町村で不適切な交付が判明
調査対象となったのは、多面的機能支払交付金(多面交付金)と中山間地域等直接支払交付金(中山間交付金)の二種類。これらの交付金は、水路の泥上げや草刈りなど、農地の維持管理に必要な費用を支援することを目的としています。
会計検査院が2019年度から2024年度にかけて、17道県440市町村の1942事業主体を対象に調査を実施したところ、少なくとも2億2千万円が過大に交付されていたことが判明しました。このうち、207市町村では農地が宅地や駐車場に転用されていたり、木が茂って荒廃していたりする状態でありながら、合計8071万円の交付金が支給されていました。
現地確認を怠った市町村が多数存在
特に問題視されているのは、多くの市町村が現地確認を適切に行っていなかった点です。要綱や要領では市町村が農地の状況確認や指導を行うことが定められているにもかかわらず、73市町村が現地確認を実施しておらず、その理由として「必要性を認識していなかった」「事務負担が大きい」などが挙げられていました。
さらに、217市町村では水をためるための「あぜ」が存在しない土地に対して、あぜがあることを前提とした「田」としての交付金を支出。この不適切な扱いにより、1億4048万円が過大に交付されていたことが明らかになりました。このうち152市町村は、現地であぜの有無を確認していませんでした。
交付金制度の仕組みと課題
多面交付金は2014年度に農村の過疎化や高齢化に対応するため、地域活動支援を目的として創設されました。一方、中山間交付金は2000年度から中山間地域の耕作放棄防止を目的に実施されています。いずれも国が事業費の2分の1を交付し、都道府県と市町村がそれぞれ4分の1ずつ負担する仕組みです。
2025年度当初予算では、多面交付金に500億円、中山間交付金に284億円が計上されており、全国の農地の50%以上がこれらの交付金の対象となっています。そのため、不適切な交付が広範囲に及んでいることは、制度全体の信頼性に関わる重大な問題と言えます。
検査院が農水省に改善要求 市町村に返還手続きを指示
会計検査院は農林水産省に対して、「指導や現地確認の必要性について、市町村に対する周知が十分ではない」と厳しく指摘。過大に交付された分の返還手続きを市町村に実施させるよう求めました。
これに対し農林水産省は、「市町村に対し、現地確認などを確実に実施するよう周知徹底する」と回答。制度の適正な運用に向けて対応を進める方針を示しています。
今回の問題は、農地保全という重要な政策目的を持った交付金制度において、適正なチェック体制が機能していなかった実態を浮き彫りにしました。今後の制度改善と徹底した運用管理が強く求められる事例となっています。