飯綱町のアップルミュージアム、芸術を通じてリンゴの魅力を拡大
長野県飯綱町にある「いいづなアップルミュージアム」では、リンゴが描かれた昭和時代のポスターやアップルのロゴが入った古いパソコン、リンゴを持ったぬいぐるみなど、多様な展示品が並んでいます。これらの共通点は、すべてが「リンゴ」にまつわるアイテムであることです。館長の小林浩道さん(63)は、漫画家としてのバックグラウンドを活かし、ユニークな企画展を仕掛けることで、この博物館の魅力を大きく高めています。
漫画家から館長へ、兄のコレクションを継承
小林さんは、飯綱町(旧三水村)のリンゴ農家の息子として生まれました。高校卒業後は漫画家を志望して上京しましたが、都会の空気が肌に合わず、27歳で帰郷します。その後、町の広報で地元の歴史などを描く漫画家として活動を続けました。
同館との縁は約30年前に遡ります。1997年、「日本一のリンゴの村」の村立博物館として開館した際、兄が初代館長に就任し、小林さん自身も来館者を出迎える外看板にリンゴの絵を描きました。兄は私財を投じて、人形や家電、レコードジャケットなど国内外のリンゴにまつわる約5000点を収集し、常設展示しました。
兄が2006年に退任し、町教育委員会の運営に移ると、教育的内容のパネル展示が拡充される一方で、従来の展示の一部は取り下げられました。漫画家とリンゴ農家の兼業を続けていた2012年、小林さんは館長代理の任を依頼されます。当初は戸惑いもありましたが、博物館の運営に関心があり、兄のコレクションを引き継ぎたいと考え、引き受けました。
芸術家を招いた企画展で「不思議な博物館」に
就任後、小林さんは「雑多な展示と教育的展示の二つがあっても面白い」と、兄の時代の展示を復活させました。2021年に正式に館長に就任すると、常設展示場の隣のギャラリーを活用し、全国の芸術家による企画展を開くようになります。
「魅力的な作家の作品を見るために訪問してもらったついでに、リンゴについて知ってもらおうと考えたのです」と小林さんは語ります。段ボール造形作家や鉛筆の彫刻家、葉っぱ切り絵作家など、ジャンルを問わず約70人を招き、企画展では必ずリンゴにまつわる作品を制作してもらい、終了後に常設展に加えています。
この果物としての「リンゴ」の枠を越えた取り組みから、同館は「不思議な博物館」として評判を集めました。テレビやSNSでも取り上げられ、2022年には過去最多となる約2万人の来館者数を記録。就任前から約2倍に増加し、これまで少なかった若者も訪れるようになりました。
未来への展望:教育的内容の充実と魅力の継承
小林さんは、「来年度からはコレクションに分かりやすい説明を加えてもいいかな」と笑いながら語ります。雑多なコレクションの魅力をそのままに、教育的内容もさらに充実させ、「不思議なリンゴの世界」に磨きをかけていく方針です。
好きなリンゴは地元に古くから伝わる「高坂りんご」で、小ぶりで酸味が特徴だといいます。小林さんのリーダーシップの下、飯綱町のアップルミュージアムは、リンゴの多面的な魅力を発信し続けるユニークな文化施設として、地域の観光や教育に貢献しています。