浜松の花川沿い、河津桜400本が咲き誇る 住民の植樹が20年で名所に
浜松・花川沿いの河津桜400本が満開 住民の植樹が名所に (26.02.2026)

荒れた土地が桜の名所に変わるまで

人口減少によって荒廃していく故郷を、美しい彩りで蘇らせたい――。そんな願いを胸に、約20年前から地元住民たちが植え始めた「河津桜の並木」が、浜松市中央区大山町の花川沿いで見頃を迎えている。現在では毎年約5万人もの観光客が訪れる人気スポットへと成長した。発起人の一人である野中真八郎さん(80)は、「多くの方々に足を運んでいただき、この地域をさらに活気づけたい」と熱い思いを語る。

結婚式前の記念撮影にも利用される桜並木

「美しい写真を撮影したくて訪れました」と語るのは、同区在住の会社員男性(27)。彼は結婚式を前に、2月22日に白いウェディングドレスをまとった妻(27)と共に記念撮影に訪れ、満面の笑みを浮かべていた。桜並木は2級河川である花川の岸辺に約1キロにわたって続き、周囲には甘く上品な香りが漂っている。

3月8日まで開催されている「東大山河津さくらまつり」では、露店も並び、家族連れや観光客でにぎわう。訪れた人々は、淡いピンク色の桜並木と、辺り一面を鮮やかな黄色に染める菜の花を背景に、思い出の一枚をカメラに収めていた。

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20年前は雑草とゴミが目立つ荒廃地

「20年前のこの地域は、荒れ果てた土地でした。子供の頃に見た美しい田園風景は、すっかり失われていました」と、野中さんは当時を振り返る。かつては人の手が行き届いた田園が広がり、透き通った水の流れる音が響いていたという。しかし、農家の後継者不足によって田畑は荒廃し、雑草が生い茂り、ポリ袋などのゴミが散乱するようになった。

観光バスの運転手として、河津町の桜並木を訪れた経験があった野中さんは、「桜を植えれば、観光客が集まり、地域が活性化するかもしれない」と考えるようになった。2007年、地域住民が農地や水環境の保全に取り組む「和地地区環境保全対策協議会」(通称・和地ふるさと会)で、野中さんが県産で比較的長く楽しめる河津桜の植樹を提案すると、他の住民たちも賛同した。

住民の協力で400本の苗木を植樹

野中さんは十数人の住民と共に、花川沿いのゴミを回収し、雑草を刈り取った。重機を使って土を耕し、3年間かけて約400本の苗木を植えていった。耕作されなくなった田畑には、コスモスや菜の花の種をまき、季節ごとに彩りを添えることにした。

住民たちは毎月、桜並木の手入れのために集まり、年輪を重ねる木々の成長を喜びながら見守ってきた。野中さんは「孫の成長を見ているようで、本当に楽しかったです」と目を細めて語る。

11年前から咲き始め、SNSで評判に

桜の花が咲き始めたのは、約11年前のこと。第1回の「さくらまつり」を開催すると、SNSや口コミで評判が広がり、県内外から大勢の人々が訪れるようになった。同まつり実行委員会の委員長を務める小林要さん(77)は、「これほど多くの方が来てくださると、手入れをする甲斐があります。私の生きがいです」と感慨深げに話す。

野中さんは、「訪れてくださる方々が『きれいだ』と言ってくれることが、何よりの原動力です。若い世代にも運営に参加してもらい、これからも長く続けていきたい」と笑顔で語った。住民の地道な努力が、荒れた土地を美しい桜の名所へと変えた物語は、地域活性化のモデルケースとしても注目されている。

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