NODA・MAP新作「華氏マイナス320°」が東京芸術劇場で上演、生命と科学の深淵に迫る
NODA・MAPの新作舞台「華氏マイナス320°」が、2026年4月10日から5月31日まで、池袋の東京芸術劇場で上演される。この作品は、化石の発掘現場を舞台に、科学者たちが謎の骨を探求する過程を通じて、生命や科学の本質を浮き彫りにする物語だ。作・演出を手掛ける野田秀樹と、科学に助けられた人物タスケテを演じる阿部サダヲへのインタビューから、作品の核心に迫る。
時代を超えた旅:古代から現代まで、生命の真理を探る
物語は、謎の骨をめぐり、現代の化石発掘現場、中世の博士の実験室、古代の洞窟など、さまざまな時代を行き来しながら展開する。生命や医療、愛の真理に迫るこの作品を、野田は「正しくない科学に基づいた、正しくないSF(サイエンス・フェイクション)」と表現する。彼は、若い頃から生命について書き続けてきた経緯を振り返り、「40年以上がたったが、またちゃんと書いておきたい。年を取り、リアルな言葉も書ける」と語る。特に、1981年初演の「ゼンダ城の虜~苔むす僕らが嬰児の夜」を「この芝居の根っこ」に挙げ、意味深長な言葉「もし命すべてなりせば」から始まる過去作との連続性を強調した。
阿部サダヲの存在が物語にリアリティをもたらす
阿部サダヲが野田の新作に出演するのは、「逆鱗」以来、実に10年ぶりとなる。タスケテという役柄について、野田は「科学に助けられたので、研究の助手をしているけど、仕事では役に立たない」人物だと説明する。しかし、阿部自身は「研究には役に立っています」と反論し、その発言の真意はまだ謎に包まれている。舞台上では、他の登場人物たちがタスケテについて話し合う場面が頻繁にあり、阿部は「僕のこと、みんなでしゃべってるんですけど、居方が難しい」と演技の難しさを明かす。これに対し、野田は「だから阿部サダヲじゃないとできない。サダヲがそこにいるとリアリティーをもって(周囲が)しゃべれている気がするんだよね」と絶大な信頼を寄せる。
野田秀樹の科学への危機感と公演の意義
昨年12月に70歳を迎えた野田は、科学者役としても舞台に立つ。阿部が「一番元気です。(稽古場を)かき回してくれています」と語ると、野田は「本能で。演劇本能!」と笑顔で応じた。物語には、野田が抱く科学技術への危機感もにじんでいる。現実世界では、スマートフォンと人工知能(AI)が融合し、人間の考え方や表現が知らず知らずのうちに変化している状況を指摘。「人間が生み出した科学技術によって、コントロールできなくなっている。核と近いんじゃないですかね」と警鐘を鳴らす。公演タイトル「華氏マイナス320°」の意味について、阿部は「ははあ、そういうことなんだと、ちょっとドキッとした」と神妙な表情を見せ、観客に深い考察を促す。
豪華キャストと今後の展開
本作には、広瀬すず、深津絵里、大倉孝二、高田聖子、川上友里、橋本さとし、橋爪功ら豪華キャストが出演し、物語に厚みを加える。また、7月にはロンドン公演が予定されており、野田が戯曲の英訳に携わるなど、国際的な展開も注目される。阿部は「知らないところでやるのは好きなので、楽しみです」と期待を寄せる。公演に関する問い合わせは、電話03・6802・6681まで。



