岡山県和気町尺所にある国指定重要文化財「旧大國家住宅」で大規模な修復工事が進められている。この歴史的建造物は、建築や文化などの研究の場として学生らに活用されており、先月行われた一般公開では修復作業を間近で見学できる貴重な機会が提供された。多くの学生が見学に訪れ、一部の学生は案内役として協力した。町教育委員会は、今後もこうした公開の機会を設ける方針だ。
旧大國家住宅の歴史と特徴
大國家のルーツは、戦国時代末期ごろに現在の岡山市北区から和気町に移住し、酒造業や運送業で財を築いた豪商にさかのぼる。主屋は1760年に建てられた木造2階建てで、「比翼入母屋造」と呼ばれる二つのかやぶき屋根を瓦屋根でつないだ構造が特徴的だ。この外観は、備前・備中・備後を代表する神社「三備一宮」とされる吉備津神社(岡山市北区)を模したとされる。
敷地面積は2859平方メートルに及び、土地と建物群は2002年に子孫から町へ寄贈された。その後、主屋を含む6棟が2004年に国重要文化財に指定された。2015年度には子孫らで構成する一般財団法人「大国家」が再取得し、建物群に残されていた約6万点の古文書は町が管理している。
修復工事の進捗と一般公開
老朽化した建物の修復工事は2018年度から開始され、国が費用の半分、県が4分の1、残りを町と同財団が負担している。完成は2027年度を目標としており、現在は全工程の約4割が終了している。主屋を高さ約1.5メートル持ち上げた状態で基礎の再整備が行われ、同じく国重要文化財の蔵座敷、酉蔵、中蔵の屋根の再生なども進められている。
先月23日と24日に企画された一般公開には、2日間で計約350人が来場した。岡山市北区の岡山科学技術専門学校建築工学科の学生ら計21人が案内役を務め、来場者に修復の過程を解説した。同科の非常勤講師で建設業も営む有正典之さん(51)は「伝統技術を維持するため、古い建物の部材で使えるものは活用している。こうした工法は教科書にはなく、現場が学生にとって貴重な教材となる」と語った。
建築設計や内装関連の仕事を志望する同科2年の女子学生(19)は「古い建物に触れ、新たなアイデアにつなげたい」と目を輝かせた。
古文書解読の取り組み
また、町から依頼を受けて古文書の解読に取り組む岡山大文学部日本史研究室の学生らも訪れ、1858年まで段階的に建設された屋敷を見学しながら、古文書を解読するためのヒントを得ていた。
修復工事の課題と今後の展望
しかし、修復工事は想定以上に損傷箇所が多いことや、建材などの価格高騰により遅れが生じている。町教委の中村暁子学芸員は「時間はかかるが、その分、貴重な文化財が修復されていく過程を多くの人に見てもらえるようにしたい」と話している。



