米国のトランプ大統領は2日、最先端の人工知能(AI)について、公開30日前までに政府による事前審査を求める大統領令に署名した。審査は義務化せず、企業側の協力を前提に行う。どのようなAIを審査対象とするかは今後、政府と企業で協議する。
背景と狙い
トランプ政権は中国とのAI覇権争いを背景に規制に慎重な立場をとるが、AIの急速な性能向上でサイバー攻撃への懸念が強まっており、リスク管理の制度構築を急ぐ。今回の大統領令では、企業側が公開30日前までに政府に先端AIを提供し、安全性を審査する枠組みを整備するよう求めた。
企業への配慮から、「政府による強制的な事前審査や許可要件の創設と解釈されるべきものではない」と明記。官民連携で、重要インフラ(社会基盤)のシステムの脆弱性対策を進める「AIセキュリティー・クリアリングハウス」を設立することも盛り込んだ。国防総省などに対しては、政府系システムに対するサイバー防御の強化を急ぐよう指示した。実際に先端AIを活用して、システムの穴を防ぐ作業を加速させる考えだ。
きっかけとなった事例
今回の大統領令は、米新興企業アンソロピックが4月に発表したAIモデル「クロード・ミュトス」の事例が念頭にある。システムの脆弱性を特定する能力が格段に高く、AIの悪用リスクに対する危機感が急速に高まった。
経緯と今後の焦点
大統領令は当初、5月下旬に署名予定だったが、延期されていた。規制を強め過ぎると、企業の技術革新を阻害する恐れがあり、修正作業を行っていた。トランプ氏は記者団に対し、「我々はAIで中国をリードしている。それを妨げたくなかった」と述べていた。
米ニュースサイト・ポリティコなどによると、従来案では90日前に企業側に自主的にAIの提供を求める内容だったが、業界側の要望を踏まえて30日前に軟化したとみられる。産業育成と安全保障の強化の双方に目配りした形となり、実効性のある枠組みにできるかが今後の焦点となる。



