惣十郎浮世始末第277回:弓浜が明かす山背とお粂の真実の関係
惣十郎浮世始末:弓浜が明かす山背とお粂の真実

惣十郎が弓浜を呼び出し、お粂の完成図を提示

翌日早朝、惣十郎は彦根の蔵屋敷に佐吉を使いに出し、弓浜を「窮理」に呼びつけた。惣十郎は弓浜に告げる。「お粂の描いた完成図が意外なところから出てきたよ。これでお前さんの望みも叶えられそうだ」。完治から預かった図面を見せると、弓浜はそれを手に取り、肩を震わせた。「これで私も、父や叔父に顔向けできます」。感無量の様子で声まで震えている彼に、惣十郎は静かに問いかける。

山背康佑とお粂の関係を追及

「それで、だ。山背康佑とお粂は、どういった係り合いだえ」。洟をすすり上げたまま、弓浜は身を硬くする。惣十郎は続ける。「いいか。ひとつ噓が混じると、ややこしくなンだよ。答えに辿り着くまでに、幾度も迂回しなきゃならなくなるしよ」。弓浜の目が泳いでいる。この期に及んでまだごまかそうとしていると察した惣十郎は、厳しく命じた。

「山背ってのが、お前の叔父ってことにゃ間違いねぇな。で、お粂は山背の囲い者だったんだろ。妻ってことにしなきゃあ、番所が動いてくれめぇとお前さんは考えたんだろうが。なにも囲い者が悪ぃと責めてンじゃねンだ、確かなところを話してくれねぇと筋道立てて番所で説けねぇからよ」。厳しい言葉に、弓浜は不意に背筋を伸ばした。

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弓浜が真実を語り始める

「正しくは、囲い者、というわけではございません。……私の叔母というのは偽りでございますが」。惣十郎が「だが、廓内に棲んでたとこを身請けされたんじゃねぇか」と尋ねると、弓浜はすぼめた肩の間に頭を落とすようにしてうなずいた。「そこまでお調べでしたら」とささやくや、山背とお粂の係り合いを語りはじめたのである。

もともとふたりは、幼馴染だった。といっても、お粂の家は士分ではなく、城下で煙管屋を営む商家の娘だった。父親が商売上手で繁盛していたし、お粂の上には兄がふたりもいて見世を手伝っていたから、羽振りはよかったという。幼い頃は山背と兄の弓浜清佑も交え、三人でよく遊んでいたそうだが、元服近い歳になると、兄弟とお粂とは、どちらからともなく隔てを置くようになったらしい。

「今じゃその片鱗も窺えませんが、お粂さんはたいそうな器量好しで、見世番をしているとお粂さん目当ての客がひっきりなしだったそうで。父が言うには、叔父はお粂さんに懸想していたらしいのですが、そうなるとひねくれて、かえって避けるようになったそうにございます」。

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