お笑いコンビ「笑い飯」の哲夫さんが、自身3冊目となる小説を上梓した。きっかけは「死について書いてほしい」という依頼だった。「仏教の死生観を小説にするってことやな」と、自他ともに認める仏教マニアの哲夫さんはすぐに理解したという。
技巧から自然体へ
これまでの小説では、ヘアゴムを語り手にしたり、一つの出来事を複数の視点から描いたりと、技巧を凝らしてきた。「ここは三島で書いたれ、とか、ここは谷崎で、とか、ありったけのパクリをやらせてもらった」と振り返る。しかし今回は仏教を題材とするため、学生を主人公にした過去2作とは構成が自然と変わった。タクシー運転手の男と、父親のルーツを求めて旅する少年が交互に語り手を務める。
忘れ物から生と死を連想
仕事でミスをした男は、忘れ物センター勤務に回され、理不尽な客の応対に疲れ果てる。この舞台設定にも、生と死が循環する仏教の死生観から連想が働いた。「忘れもんって、自分のものが死んだみたいで、すごくつらいじゃないですか。それが戻ってきたら生き返ったみたいに感じる」と語る。
仏教好きが転機に
1974年生まれの哲夫さん。「ダブルボケ」を武器に「M-1グランプリ」の常連だった若手漫才師の頃は、仏教好きを隠していた。堅苦しいイメージが仕事の邪魔になると思ったからだ。しかし、ひょんなことからばれてしまい、般若心経の現代語訳本を書くことになった。「隠すというポリシーを諦めたんです。でも、仏教では言うんです。諦めることは明らかにすること。こだわりを捨てたら、ほんまのことが見えた」と振り返る。講演や執筆活動も増え、仕事の幅が広がった。
土の視点から見える循環
回り回って、仏教の仕事と創作が今回一つになった。兼業農家としての顔も持つだけに、ついつい土の目線から考えてしまう。「土から生えたものを食べてまた土に返す。循環なんです。全部つながるんですよ」。集大成を書き上げ、さっぱりした表情で笑った。書籍は主婦の友社から1760円で発売中。



