スモーキングルーム第252回:金ボタンと兎耳、新聞を巡る会話
スモーキングルーム第252回:金ボタンと兎耳の新聞談義

「一緒に随分と稼いだからな」

金ボタンは手に取り、それをじっくりと眺めた。上質な素材で作られているため、まだ形は崩れていなかったが、襟巻きの翼と同様に、その光沢はやや褪せてしまっていた。

「これかぶっておどってたの」

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「またラジオか。ラジオばっかり聴くな。新聞を読め」

「むずかしい」

「当たり前だ。簡単なことばっかりやっていると馬鹿になるぞ」

くすり、と笑い声がした。見ると、兎耳がカフェの入り口から覗き込んでいた。「道理だが、ずいぶん若い頑固親父殿だね」とくだけた口調で言う。

「こちらは当ホテルオーナーのお嬢様です」と金ボタンは砂糖煮の娘の背中に触れ、離れるよう軽く押した。

「へえ」

「あいにくですが、こちらはもう閉店です。ルームサービスはまだやっておりますので……」

「新聞をね、今朝読みそこねてしまったから」

兎耳の目線の先で、砂糖煮の娘がボックス席の赤いソファに新聞を何紙も並べていた。新聞はすべて綺麗にアイロンがかけられ、細い木の棒で挟まれている。砂糖煮の娘はその一つを手に取り、口を半びらきにして眺めた。

「もう数時間もすれば新しいものをお部屋にお届けしますよ」

砂糖煮の娘が単語を一文字ずつ読みあげる。兎耳が追うように繰り返すと、砂糖煮の娘は楽しくなったのか、より大きな声をあげた。

「軍事裁判」と兎耳が両手をひらいて言った。連合国による軍事裁判が始まったという内容の記事だった。

「ぐんじさいばん!」と砂糖煮の娘も繰り返す。

「お嬢さんには少し難しい言葉だね」

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