人工知能(AI)の急速な普及が、エネルギーや水資源をめぐる新たな環境問題を引き起こしている。国連大学の水・環境・保健研究所(UNU―INWEH)は3日、AIの電力消費に伴う気候、水、土地への影響を分析した報告書を発表した。環境分野でも「責任あるAIの仕組み」を確立する必要性を訴えた。
国連大学報告書「責任あるAIの仕組み」提案
報告書は「AIはコードではなく、電力・水・土地の集合体だ」と指摘。データセンターや電力インフラ、計算時に出る膨大な熱を冷ます水冷却設備などの物理基盤に依存する。
実際、2025年の世界のデータセンターの電力消費は4480億キロワット時に達し、国とすると世界11位、フランスに匹敵する規模となった。その拡大は地域社会との摩擦を生んでいる。
米アリゾナ州のグーグルのデータセンターは、年間550万立方メートル、オリンピックサイズのプール2200個分の水使用許可を取得し、干ばつ地域での水資源配分への懸念が強まった。オランダでは、干ばつの年にデータセンターが8400万リットルの水を消費し、農家の反発を招いた。
さらにアイルランドでは、データセンターが電力消費の2割超を占め、送電網の逼迫を理由に新規接続が一時停止された。南米ウルグアイでは23年に水不足で飲料水の確保が政治問題化する中で、データセンター計画に抗議が広がった。
負担は地域に集中
こうした背景には、AIの恩恵がグローバル企業に集中する一方、環境負荷が地域社会に押し付けられる構造がある。報告書は、データセンターの立地に伴う騒音や排熱、水資源の消費が住民との摩擦を生んでいると指摘する。
また、AIモデルの学習や推論には膨大な計算資源が必要であり、その電力消費は今後も増加が見込まれる。国連大学は、AIの開発・運用における環境影響評価の義務化や、再生可能エネルギーの利用促進を提言している。
報告書はさらに、AIの利用自体を見直す必要性にも言及。例えば、不要な計算を減らすために「ありがとう」などの簡単な返答を省略するなど、ユーザー側の意識改革も求めている。
AI技術の進展と環境保護の両立は、今後の国際社会の重要な課題となる。国連大学は、各国政府や企業に対し、持続可能なAIの実現に向けた具体的な行動を呼びかけている。



