スモーキングルーム第200回:令嬢と煙の再会、懐かしい人形と甘い香りに包まれた物語
千早茜による小説「スモーキングルーム」の第200回が公開された。令嬢がふわふわとした足取りで部屋に入ると、天蓋付きの寝台に目が留まる。白い枕の山には、懐かしい金の巻毛の人形がちょこんと腰かけ、小さな唇で微笑んでいた。それは少女時代の令嬢が背伸びをして置いたままの姿で、時間が遡ったような錯覚に、令嬢は息を吞んだ。
銀髪の煙との再会と甘い香り
扉をノックする音が響き、「失礼致します」と銀のワゴンを押して煙が入ってくる。振り返った令嬢は煙の銀髪を目にし、満面の笑みを浮かべた。「あなたなのね」と煙に近付き、「雪の王子様」と呼びかける。煙は黙って微笑むと、「お客様の物でお間違いありませんか」と人形を見た。
令嬢が頷いて長手袋をゆっくりと外すと、煙は背後にまわって外套を脱ぐのを手伝う。「ようやくお返しできました」と煙は外套をハンガーにかけ、「お茶はいかがです」と銀のワゴンに触れた。令嬢は「王侯貴族の飲み物を持ってきてくれたんでしょう?」と問いかける。煙が部屋に入ってきた時から、甘く芳ばしい香りが部屋中に漂っていた。
二人の会話と令嬢の境遇
煙が「少々、音をたてますが構いませんか」と尋ねると、令嬢は「もちろん」と答え、絹張りのソファに腰かけた。ショコラの用意をする煙に、「わたしたち、同じ国の人になったわね」と笑いかける。煙は「わたくしはどこの国の人間でもありませんよ」と返す。令嬢は煙の口調にかすかに不思議そうな顔をしたが、すぐに「まだそんなことを言っているのね、天使さん」と目を細めた。
煙が「貴女はお元気でしたか」と尋ねると、令嬢は「相変わらずよ、我が家は人殺しの道具で栄えているわ」と冷ややかな笑みを口の端に浮かべて答える。「兄たちは軍人になったわ。母は念願の修道院に。わたしは……結局、籠の鳥ね。父が山岳地方に別荘を建てたので、そこへ避難しろって」と語り、半分ほど開けたままの扉の向こうをちらりと見る。そこには軍服姿の兵士が廊下と扉の横に立っていた。
この一編は、令嬢と煙の再会を通じて、過去の思い出と現在の境遇が交錯する情感豊かな場面を描いている。甘い香りと人形の存在が、ノスタルジックな雰囲気を醸し出し、読者を物語の世界に引き込む。



