スモーキングルーム第198回:雪の庭園に現れた「戦車王」の令嬢、ホテルに一人で到着
スモーキングルーム第198回:雪の庭園に現れた「戦車王」の令嬢 (10.04.2026)

雪の庭園に現れた神秘的な来訪者

庭園を真っ白に覆った雪が、小さな矢のような光を散らす、良く晴れた日のことだった。森からホテルへと続く白い一本道に、車輪の轍が新たに刻まれる。懐かしい客が、この静かなホテルを訪れたのである。

若き女性の到着

歪に傾く黒十字の腕章をつけた兵士が、後部座席のドアを開ける。そこから降り立ったのは、二十代前半の若い女性一人だった。彼女は毛皮の外套に身を包み、金色の巻毛をうずめ、頰は薔薇色に輝いている。白い息を吐きながら、金色の睫毛をしばたたかせて、ホテルを見上げた。

「変わらない……」と小さく呟くその声には、一瞬、あどけない表情が浮かぶ。聖母の名を持つ少女のような雰囲気を漂わせていた。

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ホテル側の対応

ドアマンを留めて、蝙蝠がホテルから駆けでてくる。「お待ちしておりました、お嬢様。地面は濡れてございます。足元、お気をつけください」と女性の手を取ろうとするが、彼女はすっとそれを避けた。

「あっちをお願い」と、兵士たちが次々に下ろす旅行用鞄や帽子箱に目を遣い、彼女はホテルに入っていく。金ボタンはフロントの前で待っていた。格の高い客室が並ぶ階を借り切った客が来るとは知っていたが、若い女性が一人で入ってきたのは意外だった。

驚異の美貌とその背景

ひと目見て、「すごい美人だ」と金ボタンは思う。雪のように白く透明な肌。玄関ホールのシャンデリアから降りそそぐ光を受けて煌めく金髪。まだ幼さを残した目元に、つんと高貴な鼻、石像のように整った顔。そこに、血を一滴落としたような唇があった。

「おい、色男、変な気を起こすなよ」古株のフロント係が金ボタンに耳打ちする。「あれは、血塗られた兵器商の娘だよ。目下、最強と名高い装甲戦闘車両を製造している会社のな。先の大戦では『大砲王』だったが、今は『戦車王』と呼ばれている。その家の、血のご令嬢さ」

この一言で、ホテル内の空気が一変する。美しい外見の裏に潜む、重い背景が明らかになった瞬間だった。雪の庭園に現れたこの女性は、単なる客ではなく、大きな力を持つ一族の令嬢なのである。

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